今払っている「年金保険料」は運用されている? 私たちが年金を受給する20年後には、年金額はかなり増えるのでしょうか?
■図表1「GPIFの運用利率の推移と運用実績の指数」 ※GPIFホームページより筆者作成 利回りは2015年と2019年にマイナスとなっていますが、2012年度からの運用実績は、全体として右肩上がりの傾向にあることがわかります。 また、GPIFは2001年からの累積で、108兆3824億円の収益があります。2022年度末の運用資産総額の200兆1328億円から見ると、資産は運用によって倍以上増えていることになります。 「年金原資が増えているのであれば、年金の支給額を増やせばよい」と考える人もいるかもしれませんが、現在の年金制度は「100年安心な制度」として、長寿化や人口の減少を考えた上で運営されているものです。 GPIFでは今後の年金原資の減少を緩やかなものとするために、運用が行われています。運用が好調だったとしても、今後の年金制度の維持のため、長期的な視野で年金支給額が決定されていると考えられます。
現在の年金制度で利用されているのは、マクロ経済スライド
年金原資が増えていながら、GPIFがなお年金の運用を行っているのは、今後の長寿化や人口減少による年金原資の減少を、緩やかなものにするためです。年金制度を長く維持するための施策は、GPIFの取り組みに限らず、年金支給の際も採られています。 2014年までの年金制度においては「物価スライド」という、物価の変動に合わせて年金支給額を変動させる方式が採られていました。 しかし、前述したように今後の長寿化や人口減少を考え、「マクロ経済スライド」という方式が採られるようになりました。この方式は、物価の変動の影響のほか、保険加入者の増減や長寿化による支給の長期化を考えた上で、年金支給額を調整するものです。 この法式では、「スライド調整率(今後の長寿化などに対する調整率)」が-0.9%と推計されています。そのため、仮に物価上昇が1%あったとしても、年金支給額は0.1%しか増えないことになります。 この制度が採られている間は、物価が上昇しても年金がそれより増えないことになります。従って、年金は増えたものの支出も多くなることが考えられ、実質的には年金が目減りすることになるでしょう。