伊藤詩織さん監督映画めぐる双方の主張は? 元代理人は「承諾ない部分は修正を」、監督側は「指摘は不正確」と反論
⚫︎「裁判の証拠となった映像」と「映画で使われた映像」の違いとは
西廣弁護士と代理人の佃克彦弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に、記者会見から10日後に伊藤さん側から内容証明(10月31日付)が送られてきたと明かした。 伊藤さん側は、この内容証明の中で、記者会見の内容に対して「映画の中で映像はそのまま使われておらず、ホテルから開示されたものをもとにプライバシーに配慮してCGを使って制作した」「すべての警察官の声を加工・変更して使用しています」などと反論した。 また、伊藤さんは協議の中で、新たな映像を制作し直し、映像はホテルからのオリジナルのものではないと映画で注意書きすることを提案するなど、西廣弁護士側と向き合ってきたと説明。そうした経緯が記者会見では説明されていなかったことから、伊藤さんが誠実に対応していないような印象をもたらしたと批判している。 この書面を受け取った西廣弁護士は「そもそも私たちは映像についてプライバシーの点だけではなく、ホテル側に承諾を得られているかどうかを問題にしています。いくら映像を加工しようが、ホテル側から承諾が得られていないまま公表されていれば問題と考えます」と説明する。 西廣弁護士らによると、映画で使われている映像は、承諾が得られていないだけではなく、CGでゼロから作られているものではないという。 裁判に証拠提出された映像との違いは、ホテルエントランスに停まったタクシー車体の天井部に「あんどん」が付け加えられたほか、全体的な色味の変更や一部でぼかしを入れた以外に見受けられず、「本質的にそのまま映像が使われていると言うほかない」という。
⚫︎元代理人「公益通報者保護の観点からも警察官とのやりとりを公開することは問題」
また、西廣弁護士は、警察官とのやりとりの映像や音声は、映画の中で加工・変更しているとは確認できなかったと説明する。 映画で登場した警察官の中には、上層部からの指示で男性を逮捕できなかったという情報を伊藤さんに伝えた捜査員との会話も登場するとして、「隠し撮りしていた捜査員の顔は見えないが、その姿は晒されていた。取材源であり、事実上の公益通報者である警察官の保護の観点から大きな問題になる」とうったえる。 今回送られてきた内容証明の中には、伊藤さんへの誹謗中傷が引き起こされる可能性があるとわかったうえで記者会見に臨み、会見後にはネット上で伊藤さんへの中傷が投稿されているという指摘もあった。 こうした指摘に対して、佃弁護士は「今回の映画の問題と、伊藤さんの受けた性被害は別の問題であり、会見でもメディアの前で説明しています」として、メディアや読者にも誹謗中傷はしないでほしいことを会見で伝えたと説明。 「伊藤さんの映画が評価され、ジャーナリストとして活躍してほしいと思います。しかし、人権侵害にあたる問題は解決されなければいけません」(西廣弁護士)