アイルランドで続いた死傷事件 欧米右派が「イスラムのテロ」と煽る
アイルランド北東部のダンドークで3日、夜勤から帰宅途中の日本人男性が刺殺される事件が発生した。事件現場周辺では他にも2人が刃物で突然襲われ負傷しており、地元警察はエジプト出身とされる少年を容疑者として逮捕した。英領の北アイルランドとの国境にも近い小さな町で発生したショッキングな事件を、反イスラム運動に利用しようとする国内外の政党やメディアの存在もあり、ダンドーク事件はこれまで難民に対する風当たりがそれほど強くなかったアイルランドの世論に少なからぬ影響を与える可能性がある。 【写真】右派政党が過激な「反イスラム」選挙ポスター ドイツ揺るがす難民問題
エジプト出身?の少年を逮捕
事件は現地時間の3日午前9時頃に発生した。地元メディアなどの報道によると、米企業のアイルランド法人に勤務する佐々木洋介さん(24)は、夜勤を終えたあと、午前8時半ごろにオフィスを出た。その直前、佐々木さんは同僚に「帰宅前に郵便局に荷物を取りに行く」と語っていたという。佐々木さんは市中心部で突然ナイフで襲われ、約30分後にはその近くでアイルランド人男性が刺されて負傷。さらにその数分後には別のアイルランド人男性がポールで殴られて負傷した。警察はエジプト出身の18歳少年を容疑者として逮捕した。 逮捕されたモハメッド・モレイ容疑者はエジプト出身と伝えられているが、現時点で正確な国籍は捜査当局から発表されていない。モレイ容疑者は難民申請者としてイギリスに滞在し、北アイルランド経由でアイルランドに入国した模様で、事件発生の2日前になる1日にはダンドーク市内で地元警察から職務質問を受けていた。その際にモレイ容疑者は難民申請者としてアイルランドに来たことを警察官に話したが、必要な書類などを所持していなかったため、警察官から難民申請を行うために首都のダブリンに必要があると説明を受けている。事件はその2日後に発生した。 3人を死傷させた事件をテロと関連付けることはできないという見解を捜査当局は示したが、犯行の動機や、なぜイギリスを離れてアイルランドに入国したのかといった点は依然として不明だ。同時に、イスラム教徒に対するヘイトクライムがアイルランドでも広がる可能性も懸念され始めた。