虎の“ミスターオクトーバー”福留がマエケンに引導!
前半戦は、打率が2割を切って2軍落ちまで経験した。あの絶不調だった福留と9月に入ってからの福留はまるで別人。この試合も含めて直近の7試合で、22打数11安打の打率5割で7打点、2本塁打の数字。「恐怖の6番」としての存在感を示す。メジャーでもポストシーズンに入ると大活躍したレジー・ジャクソンのような特別な選手が存在したが、まさに終盤戦に入ってからの福留のバットには手がつけられない。 広島のスコアラー陣も、事前に福留をかなり警戒していたようで、野村監督は「しっかりとミーティングしたことが裏目に出た。過敏になってカウントを悪くした」と悔やんだ。こういう現象をプロの人々は、「後手を踏む」と嫌がるが「6番福留」がカープバッテリーに後手を踏ませたのである。 開幕前に京セラドームのブルペンで福留への極秘指導を行ったことのある、阪神DCで評論家の掛布雅之氏は、福留の再生理由をこう見ている。 「ずっと踵重心になってバットが遠回りする点が気になっていたけれど、今はそれが解消され、右足にしっかりとした壁ができている。しかもバットが体に巻きつくように出ている。だから打ち損じが減っている。今日のホームランにしたボールも、これまでならファウルになっていただろう。彼は多くを語らないが、おそらく、その理由は体調面の回復にもあるんだと思う。開幕直後の東京ドームで西岡と激突してから、そうとう無理をしながらプレーを続けてきたのだろう。また左ひざは手術をしたくらいに悪かったんだからね。とにかく、今は3番から6番まで打線が固定できていることが大きい。カープには左が少ないから、なおさら福留が生きる。ファイナルステージも含めて、福留がシリーズ男になるんじゃないか」 福留が、昨年1月の入団時に結んだ複数年契約は、3年でまだ1年残っている。つまり、このオフに契約更改が待っているわけではなく、終盤の活躍は、数字の帳尻合わせではなく、福留が胸に秘めてきた意地とプライドでしかない。メジャー帰りの福留獲得については、当初、電鉄本社もフロントも乗り気ではなかったが、和田監督が強く求めて実現した経緯がある。和田監督は、今季、福留が打てない時期にも、その守備力を評価して使い続けた。その起用法への是非は今でもある。福留をうまく操縦していれば、巨人との差はもっと縮まっていたのではないかという意見があることも事実。だが、和田監督が貫いた一途な起用は、信頼と責任と使命感に変わり、福留のバットを確かに生き返らせた。