美しくて“かわいい”結びの技 1400年の歴史を誇る「水引」の可能性を探って
ケルト文様と水引の不思議な関係
書道などの「線」から生まれるものに魅了され、水引に出会う前から森田さんが関心を寄せていたのが世界各地で伝承されてきた文様だった。そんななか、水引を学び始めたときに「あわび(あわじ)結び」がケルトの伝統的な結び目とそっくりなデザインだということを知る。 「さらに、水引で世界の文様を作りたいと思い調べていくうちに、ケルト文様だけでなく、アラベスク文様やトルコ文様、アール・ヌーヴォー文様のなかには、日本の伝統文様と似ているものがあることを知りました。1本の線から生まれた文様が、はるか昔にシルクロードを通って日本にも伝わってきたのだろうかと思いをはせると、水引がより面白く感じられ、奥深い世界だなと改めて思うんです」 伝統を受け継ぎ、遠く離れた異国と共通する文様を有する神秘的な存在としての水引。「いつか水引をきっかけに文化交流ができたらうれしい。個人的には、いつか水引で服を作るのが夢」と語る森田さんが作りたいものはまだまだたくさん。1400年の時を超えて、水引の可能性は広がっていく。 取材・文:田口 みきこ
和工房 包結
水引教室は京都、大阪、兵庫、名古屋、東京、オンラインで年間を通して行っている。 ・詳しくはホームーページ(mizuhiki-houyou)を。 ・森田さんの作品の数々はインスタグラム(wakobo_hoyou)でチェック!
【Profile】
森田 江里子 MORITA Eriko 東京都出身。女子美術短期大学服飾科卒。日本書道専門学校卒。美術・日本文化への関心から水引にたどり着く。2007年、和工房包結(ほうゆう)を設立し、京都に移住。古都で触れる四季折々の風物詩や文化遺産にインスピレーションを受けながら、創作活動から後進育成、古い折形水引の探究・伝承まで幅広く活動している。一方で、水引に出会う前から惹かれていたのがケルトの結び文様。水引の「線と結び」が織りなす世界に深く入り込むほどに、水引とケルト文様を結ぶ見えない縁を感じ、改めて水引作家としてその美しさを捉えたいと願う。著書に「季節をむすぶかわいい水引」(ブティック社)等がある。筆耕歴25年、未生流華道 師範。 田口 みきこ TAGUCHI Mikiko フリーの編集者/ライター。インテリアや写真などの雑誌編集を経て2007年よりフリーランスに。現在は、書籍やウェブメディア、広告媒体などに、編集者およびライターとして携わる。