持ち運びできる“アート”三越のショッピングバッグ「実り」が10周年 人間国宝の森口邦彦が語るその柄への思い
三越日本橋本店は本館1階中央ホールで9月16日まで、特別展「MINORI 10th Anniversary きもの『実り』から誕生したショッピングバッグと世界への架け橋」を開催する。同展は、重要無形文化財「友禅」の保持者(人間国宝)の森口邦彦氏がデザインしたショッピングバッグ誕生10周年を祝うイベントだ。5階まで吹き抜けの会場にある天女(まごころ)像の背後に、900枚のショッピングバッグを用いたインスタレーションが登場。会場内には、文様の元になった友禅訪問着「白地位相割付文 実り」をはじめ、ショッピングバッグの構造に合わせて制作された縮緬地友禅を紹介している。
また、フランス文化通信省の施設であるセーヴル陶磁都市のプロジェクトの“カップ・アンド・ソーサー”を展示。フランス発ジュエラー「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)以下、VC&A」とのコラボレーション“プレシャス ボックス”も同イベントのためにパリから取り寄せられた。森口氏とセーブル市や「VC&A」の取り組みを記録したショートフィルムも公開されている。イベントに来場した森口氏は、「三越の創業者である日比翁助の魂が反映されている天女像と良いコラボレーションができた」と語った。
森口氏の思いが反映された“小さなアート” 「実り」の文様はたわわに実るりんごを幾何学模様で表現したもので、一見、単なる同じ模様の連続に見えるが、訪問着名にあるように模様が徐々に変化する“位相”の柄になっている。森口氏は、ショッピングバッグのサイズごとに柄を設計直して、キモノの制作のいろいろな過程を表現。サイズや部分によって太さや見え方が異なる。「友禅の図柄は人が着てこそ美しい。そうなったときに、私が考えた夢が実現したと感じる」と言う同氏の思いが細やかに表現されている。このような思いや友禅の技法、グラフィックデザインの奥深さが反映されたショッピングバッグは、持ち歩ことのできる“小さなアート”のようなものだ。