5年の勤務で雇い止め…私立学校の非正規教員、横行する無期転換の回避
労働組合「私学教員ユニオン」(東京)が昨年12月21日、私立学校の非正規教員の雇い止めについて考えるセミナーを東京で開き、オンラインで配信した。私立学校は1年などの有期契約で働く教員が多いとされ、高校では非正規教員が約4割に上るとの推計もある。セミナーでは、労働問題に詳しい弁護士が雇い止めに関する法的ルールを紹介したほか、現場の教員の報告もあった。 (編集委員・河野賢治) 【写真】雇い止めの法的ルールを説明する川口智也弁護士 雇い止めは、例えば雇用契約が1年間の場合、1年働いた後に契約が更新されず、そのまま退職となることを指す。基調講演した川口智也弁護士(東京弁護士会)は、有期労働契約で働く人の雇い止めに関する法的ルールとして労働契約法18条と19条を挙げた。 19条は雇い止めを規制する条文。川口弁護士は(1)労働者が引き続き働くことを望んでいる(2)契約が更新されることに合理的な期待が持てる(3)雇用打ち切りが合理的な理由を欠く-の3点に該当すれば、労働契約が継続されると解説した。 (1)は「働き手が雇い止めに抗議したり、不満を言ったりすることで条件が満たされる」と説明。(3)については、正当な理由のない解雇を無効とするルールと同じ扱いになるという。 その上で、雇い止めの違法性は、特に(2)が争点になると説く。判断材料として「契約更新の回数や、雇用の通算期間」「業務内容は恒常的・基幹的なものか、臨時的・補助的なものか」「採用面接時や更新時に期待を持たせる言動があったか」などを挙げ、総合的に検討されるとした。 契約更新の回数が多く、雇用の通算期間が長い場合や、基幹的な業務に就いていると、違法性が認められやすいが、「学校の業務は、授業や保護者対応、学校行事、入試など多岐にわたり、どの仕事が恒常的・基幹的か、判断が難しくなる」と語った。 18条は、有期労働契約の人が通算5年を超えて働くと、契約期限のない無期雇用への転換を申し込む権利を得る条文。「無期転換ルール」と呼ばれ、非正規労働者の雇用安定のため、2013年4月施行の改正労働契約法で定められた。 川口弁護士は課題として、労働者が無期転換ルールを知らないと権利を行使できない点を挙げた。昨年4月に国の規則が改正され、無期転換権を得る時点で、それを働き手に伝えることが雇い主に義務付けられた。ただ、雇用契約を5年以内とすることなどで無期転換を回避する例が横行しているという。 実際の相談例として、1年契約を4回更新した後、通算5年の勤務で雇い止めに遭った私立高校の非常勤教員を挙げた。もともと5年の勤務後は更新しない契約内容になっており、「無期転換を回避して雇い止めをする契約と思われる」と指摘した。 問題解決に向け、日本労働弁護団の意見書にも触れた。雇い主が求人や雇用契約の締結、契約更新などのタイミングで、従業員に無期転換権を周知すること▽従業員に無期転換権の意向を確認すること-を義務付けるなどの内容だ。川口弁護士は「雇い止めに遭っても1人で学校と争うのは簡単ではない。労働組合に入れば、同じような状況で戦う組合員と連携して学校と交渉できる」と強調した。