「この姿もまもなく見納め?」 ── ブルートレインが走れない理由とは?/鉄道ライター・伊原薫
さる10月18日、大阪駅にブルートレインがやってきました。旅行会社が主催の団体列車として走ったこの列車は「日本海縦貫線号」という名称で、ほぼ満員のツアー客を乗せて青森→大阪→新潟と運転。貴重な夜行列車の旅を満喫しました。列車には寝台特急「日本海」「つるぎ」を模した特製のヘッドマークも取り付けられ、駅や沿線では多くの鉄道ファンがその雄姿を撮影。大阪駅にブルートレインがやってくるのは久しぶりのことで、一般のお客さんも珍しそうにカメラを向けていました。しかもこの光景、「あと何度見られるかわからない」との噂も。数年前までは毎日見られたのに、何ともさびしい限りです。
ブルートレインはもはや絶滅寸前
かつて日本全国を駆け巡っていたブルートレインはもはや絶滅寸前。今回走った団体列車の元となる「日本海」「つるぎ」も、それぞれ2012年・1994年に定期列車利恵の役目を終えています。現在、大阪駅を発着する寝台列車は豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」のみで、これも来年3月での運転終了がアナウンスされています。 一方、上野駅を発着する寝台列車は同じく豪華寝台特急「カシオペア」「北斗星」の2往復、東京駅を発着する寝台特急は、ブルートレインではなく新型の寝台電車を使用した「サンライズ瀬戸・出雲」のみとなっています。いわば、昔ながらの「ブルートレイン」に乗ることは、すでに日本国内ではほぼ不可能となっているのです。
「リバイバル列車」走行も難しく。その原因は?
今回の「日本海縦貫線号」は、前述の通り旅行会社・日本旅行が主催した団体旅行でした。日本旅行ではこれまでにも、廃止となった特急列車や車両を復活させる形で様々な「リバイバル列車」を走らせてきました。しかしながら、今後はそういった取り組みも難しくなると言われています。 その原因の一つは、使用する車両の問題です。寝台列車の廃止には、その原因のひとつに「車両の老朽化」があります。たとえ列車としての需要があっても、新型車両の製造コストに見合うだけの利益が見込めなければ、列車は廃止となります。この場合、その車両はもう寿命が近づいているということですから、団体列車としての使用も不可能になってしまいます。実際「日本海縦貫線号」で使用された車両は、新しいものでも製造から35年が経過しており、手入れは行き届いているものの、車両の限界が近くなっていたとしてもおかしくはありません。 次は、今回の列車が走った北陸本線を巡る環境です。近畿地方と北陸地方を結ぶ大動脈・北陸本線は、来年3月の北陸新幹線開業に伴って、3つの第三セクター鉄道へと経営が分離されます。これまで、例えばトワイライトエクスプレスではJR西日本・JR東日本・JR北海道の3社が協議し、時刻などを調整してきましたが、これが一気に6社の調整が必要となるのです。運転士の手配などもこれまで以上に手間がかかり、そもそも第三セクター会社では電気機関車の運転士を確保できるのか?といった問題も出てきます。(ちなみに、「カシオペア」「北斗星」が通過するIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道では、これらの列車はJR東日本の運転士が運転しています。)