短い練習でも「全国出場」遂げた吹奏楽団の正体 楽しみながら「自主性育む」運営ノウハウは
「バンドづくりは料理」地域移行で実践できる短時間練習法
オザワ部長:昨今は教員の方の働き方改革や生徒さんの学業との両立などがクローズアップされ、いかに短時間で効率的な練習ができるかどうかということも注目されますが、その辺りの実践についてお聞かせください。 石田:私は練習方法をレシピと呼んでいますが、料理のように工程を分けてステップを踏んで練習すると、短時間の練習であっても、聞いてもらう人の耳に心地よいサウンドになると考えています。 いわば、バンドづくりは料理です。例えば、作り手の個性が出やすいカレーであっても、多少の後先はありますが、作る際の共通の手順がありますよね。具材とルーと水を一気に入れて茹でたら、さすがに美味しくならない。でも、そうしたバンドの作り方をしてしまう人もいます。 オザワ部長:カレーに例えると、味が出てきますね(笑)。バンドにはさまざまなレベルの方がいらっしゃると思いますが、先生のレシピに沿って練習すると、みなさん同様に上達できるのでしょうか。 石田:3カ月もすれば、学年が上の先輩に追いつくことができますよ。ただ、飽きっぽい人は続かないです。そんなことやる暇あったら曲の練習したほうがいいと固定観念を持っている人も上手になりません(笑)。 レシピ全体を通して私が重要視しているのが、実践のペア練習です。 例えば、先生と生徒、または先輩が後輩とペアを組んで教えるとしますよね。腕組みしてそこはこうだよと言葉で説明して聞かせるよりも、何も喋らずにメトロノームだけ鳴らして実際に吹いてみせることが大事です。 生徒や後輩にも同じ音を同じ長さで吹いてもらって、音の周波数や波形を見るオシロスコープ、音量をデシベルで表示するサウンドメーターなどを用いて音の違いを比べます。教える側は数値で違いを把握できますし、生徒は音を聞いてまねて、感覚的によい音の出し方をつかんできます。 オザワ部長:1対1で人をまねてうまくなっていくと。音楽は英会話みたいなものなんですね。一昔前の日本の英語教育のように、理屈で文法だけ教えても一向に話せるようにならないのと同じように感じました。 石田:おっしゃる通り! 音楽と言語は同じです。私は幼少期から父親の転勤の関係でいろんな場所に住んできましたが、住むと現地の言葉に慣れて、いつの間にかイントネーションが変わります。なじむのは早くて、子どもは1週間もかからないです。また、友達が話している時に被せて話すことはしないように、音楽も、同時に吹くより、1人ずつ回して吹いて、他人の音をよく聞いてまねたほうがすぐに上達します。 オザワ部長:バンドの中でのペア練習というのは上達度が高い人と低い人がペアですか。 石田:そうです。さらに曲の練習をする際にポイントになるのが、同じ楽器同士ではなく、同じフレーズやモチーフを吹いている人同士で練習することです。このことを私はパートではなく、パーツと呼んでいます。 開智アカデミックはパート練習よりもパーツ練習を多くしています。曲作りは、一緒に100回演奏するよりも、同じフレーズを1人ずつ順番に吹いて、それを30回繰り返したほうが上達します。