「ワタミ×サブウェイ」は“健康志向”でファストフード業界を脅かす存在に⁉︎ 異例の大型買収を決断したワタミの狙い
ワタミが、日本サブウェイの持分すべてを取得して10月25日に子会社化した。介護や宅食事業への参入を目的としてM&Aを行うことはあったが、屋台骨となる外食においては自前での事業立ち上げにこだわってきたからこそ、今回の大型M&Aは極めて異例だ。それだけに、この買収はワタミにとって大きな意味を持ち、外食事業の起爆剤となる可能性も秘めている。 【図】ワタミグループの売上高、営業利益、店舗数の推移
居酒屋の売上は2019年の6~7割
サブウェイの取得でファストフード事業に乗り出すと報じられているが、ワタミはすでにこの分野に参入していた。 そのなかのひとつ、韓国風フライドチキン専門店の「bb.qオリーブチキンカフェ」は、オリーブオイルを配合した特製のフライオイルでチキンを揚げるという隠れた人気店である。2018年に1号店をオープンしたが、現在の店舗数は19と多くない。 他にも「TGIフライデーズ」ではハンバーガーを扱っており、メキシコ風アメリカ料理レストランの「TEXMEX FACTORY」で提供するタコスはファストフードに近い。 コロナ禍では「から揚げの天才」というテイクアウト業態をも全国に展開していた。 つまり、ワタミは早くからファストフードや日常食業態に進出していたが、規模を拡大しきることができなかったのだ。 M&A巧者である電機メーカー・ニデックの永守重信代表取締役グローバルグループ代表(取締役会議長)は「M&Aは時間を買う」と表現したが、ワタミのサブウェイ買収はこれに倣い、ファストフードという領域で迅速かつ確実に規模拡大を成し遂げる狙いが浮かび上がる。 そんな中、ワタミは業績を伸ばす足掛かりが必要だったのだ。 ワタミの国内外食事業は2024年3月期に黒字転換を果たした。営業利益率は4.1%で、コロナ前の2019年3月期と比較して1.7ポイント上がっており、2024年4-6月も営業利益率は4.6%と好調だ。 しかし、2024年6月末時点の店舗数は322であり、3月末の328から減少している。 これはコロナをきっかけとして不採算店を整理し、筋肉質な組織に仕上がったからに他ならない。 そこから反転攻勢に出て勢力を拡大したいところだが、そう順調にいかないのは需要が回復していないからだ。 日本フードサービス協会によると、2023年の居酒屋の売上高は2019年比で4割減の62.2%だった(「データからみる外食産業」)。 2024年9月の居酒屋の売上高は前年同月比で104.1%。つまり、居酒屋の市場は2019年の6~7割の水準で止まってしまっている。 需要が完全回復していない以上、ワタミが得意とする居酒屋を出店するわけにはいかない。 コロナ禍で焼肉店「焼肉の和民」を開発したが、繁華街や駅前のビルを中心に出店したため、リピーターとして欠かすことのできないファミリー層の取り込みが十分にできていないようだ。 これは多くの店を既存の居酒屋から焼肉店に業態転換したことが影響している。従って、焼肉店も結局は居酒屋的な使われ方をしているということだ。 2024年3月期のワタミの国内外食事業の売上高は320億4600万円で、この数字は2019年3月期の3割減というものだ。 市場のバランスと絶妙に釣りあっているが、ここから大量出店に出ようものなら、再び不採算店を作ることになりかねないというわけだ。