【プーチンも注視する米大統領選】トランプ・バンス政権がウクライナ情勢にさらなる混乱をもたらす理由
「ウクライナの中立化」は世界を混乱させる
上記論説記事の2日前、7月27日付のフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、ウクライナ戦争が「公正な平和」で終わるようにウクライナの立場を強める必要があると論じていた。その社説の中で、ウクライナで領土的譲歩を行っても、停戦を望む声が少数派ではあるが、出てきていることが言及されていた。 上記ラックマンの論説は、ウクライナ戦争の終結には、領土的譲歩のほかにウクライナの中立化という問題を考える必要があることを指摘したものである。 ロシア側はウクライナの中立化の問題をあきらめておらず、和平交渉の中でロシアが再度提起することが確実であると思われている。トランプ陣営の副大統領候補JDバンスは、ウクライナを「中立化」して、この戦争を収めることを提唱しているということだが、トランプ・バンス政権がウクライナの中立化を認める可能性は十分あるのだろう。 しかし、これは、「ウクライナの未来はNATOの中にある」とのワシントンでのNATO首脳会議での考え方に真っ向から反対する考え方であり、トランプ・バンス政権は国際情勢を更なる混乱に落とし込んでしまいかねないだろう。
ロシアもウクライナも戦い続ける
ラックマンは、ウクライナの中立化はウクライナをロシアのなすがままにすることになるとして反対しているが、当然である。 いずれにせよ、プーチンは米大統領選挙の結果が出るまで戦い続けるであろうというラックマンの見通しは正しいであろう。ウクライナも自衛のために戦い続ける以外に道はないと思われる。 領土で譲歩しても停戦をというウクライナでの少数意見は、ロシアの姿勢に鑑み現実的な考えではない。プーチンの戦争目的はもっと遠大である。
岡崎研究所