【単独】GENDA会長に聞く映画配給ギャガM&Aのウラ、社内は「胸アツ」だったワケ
衝撃を受けたディズニーの「ある判断」
──ショッピングセンターへのゲームセンター展開ではないのですね。 片岡氏:最初はショッピングセンターへの子供向けゲームセンターの多店舗展開を行いたかったのです。ただ、ショッピングセンターの機能もまた、コロナ禍で大きく変わりました。 その代表例がウォルト・ディズニーです。彼らはロックダウンからの回復期にも関わらず、ディズニーストアを次々と閉めたのです。普通は採算が悪いところだけ閉店、という選択肢を考えると思いますが、彼らは儲かっているストアも含めて全てを閉店しました。今後はオンラインに集中するんだ、と。その舵の切り方はすごいですよね。その判断を横目で見て、ラウンドワンさんのように「磁力ある事業」でそれを目的にくる顧客がいるような事業はまだ可能性があるけれど、子供向けゲームセンターのように、ショッピングセンターに来る顧客の数%についでに寄ってもらうようなビジネスモデルはもう通用しない、と思ったのです。 ──それでクレーンゲームの無人スペースなのですね。日本でもここ10年で急激に伸びた市場でした。 片岡氏:1回のプレイ単価は1ドルです。日本よりも単価が高いですし、しかもよく売れます。機器はもともとOEM(相手先ブランドによる生産)で中国で作っていましたので、それをアメリカに持っていき、景品も日本向けに作っていたものを版権をクリアにして米国に持っていっています。機器も中身も日本のもので十分に広がっていったのです。
米国では「Kawaii」が人気?
──やはりクレーンゲームの中身は日本のアニメIPものが中心なのでしょうか? 片岡氏:いわゆる『鬼滅の刃』とか『呪術廻戦』などのIPものは実は1割程度、それ以外は自社で生産しているネコとかクマとかいわゆるIPのない「かわいい」ぬいぐるみです。今は「日本製のKawaii」そのものがIP化している傾向があって、それだけで米国の無人クレーンゲームでバンバン遊ばれているのです。原価が高いIPものと非IPのKawaii商品を混ぜながら売っていますが、弊社としての収益の大半は非IPものです。 ──それは驚きです。そこまで「日本製のKawaii」だけで人気が上がるのですか? 片岡氏:ここで出会ったのが競合でもあったNENでした。先ほど述べたように、米国に9000カ所のミニロケをもつ大企業ですが、実は1カ所当たりの収益はKiddletonのほうが3倍高かったのです。いまでも売上1億ドルのNENですが、そのままこちらが培ったオペレーションを入れていけば3億ドルになるのではないかとM&Aに臨みました。我々にとっての「ドリームディール」です。 ──古い古いと言われた米国のアーケードゲームに今革命が起こっている感じがしますね。過去20年、ずっと日本に比べて米国アーケードは厳しい市場でした。さて、GENDAとしては今後どんな展開を考えられていますか? 片岡氏:私は「世界一のエンタメ企業を作る」ことを目指した30年前から一ミリもぶれていません。今の計画では2040年にディズニー超えをする想定で、今後もM&Aとオーガニックな成長を続け、これを実現していきます。弊社ではとにかく意思決定のスピードを極限まで上げています。M&Aのジャッジ自体は5名で行っていますし、検討していて決めないということは弊社の場合はあり得ません。現在は中国・台湾・ベトナムでも事業が始まっていて、いま欧州にも支社を設立したところです。 小学生の頃、自作のカードゲームが学校中で流行った時の嬉しかった気持ちと今の気持ちは変わっていません。あの時同じ学校の皆が、私が考案したゲームを楽しんでくれたように、GENDAを通じて世の中にある「楽しさ」の総量を増やしたいのです。
聞き手・執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山 淳雄