“エンジン音がないF1” 電気自動車のフォーミュラEとは
また、今回のコースは全長が約2キロと短く、およそ1分程度でマシンがコースを一周して戻ってきます。しかも、マシン性能に差がないので周回ごとに激しいバトルが見られます。「コースが短かくてレースが単調になるのでは?」との心配もありましたが、実際に観戦してみると「1分程度で盛り上がりを繰り返す間隔が気持ちいい」ということも発見でした。 さらに予選終了後、決勝レーススタートまでの間のパドックで、マシンのバッテリーなどをドライアイスを使って冷やしている光景も興味深いものでした。初年度である今シーズンは、全チームが同じ条件のマシンで戦っているフォーミュラEですが、ドライアイスでバッテリーを冷やすために使う手作りの機械などが、それぞれに工夫が凝らされてチームごとに違っていることに、根源的な「レースへの心意気」を垣間見ることができたのです。
日本開催も日本人ドライバーもいない現状
電気自動車の世界では、日本メーカーは世界に先駆けて量産市販車を発売しました。でも、ここ数年はアメリカのテスラや、BMW、フォルクスワーゲンといった欧州メーカーに押され気味です。フォーミュラEも、日本での開催がないのはとても寂しいことだと感じます。日の丸を掲げたチームも、日本人ドライバーもレギュラー参戦(開幕戦で佐藤琢磨が走っただけ)していません。 爆音も排気ガスもない電気自動車でのレースは、雰囲気としては自転車レースやマラソンに近く、街にもすごくフレンドリー。例えるならば、山鉾が巡行する祇園祭や「だんじり」、「ねぶた」などのお祭りにも近いといえるのではないでしょうか。このロングビーチのように1周2キロ程度の市街地コースを設定すればいいのですから、たとえば東京都心などの都市部で開催することも、エンジン車のレースに比べてハードルは低いはずです。 市販車ではかろうじて世界をリードしながら、フォーミュラEではやはりヨーロッパやアメリカ、さらには中国に道を譲り、うまく参加できていないあたりに、世界の中での日本の弱点を見る気がします。ちなみに、今年のフォーミュラEが搭載するリチウムイオン電池は韓国製。何というか「がんばれ! ニッポン」という思いがします。