2026年まで契約更新のアンチェロッティ監督、その素晴らしき手腕
12月29日、カルロ・アンチェロッティ監督の26年までの契約更新が発表された。 24年の主役は彼と彼の率いるレアル・マドリーで、それを追いかけるアトレティコ・マドリーとバルセロナ、ジローナは何とか上位に踏み止まろうとする、という構図になると見ている。 アンチェロッティは“パッチワークの天才”である。丁寧にツギハギを当て穴を次々と塞いでいくタイプだ。
ベンゼマが出て行けばベリンガムをトップ下に置いて“隠れCF化”する、左SBがいなくなればカマビンガをコンバートする、中盤が強度不足ならバルベルデを右FWに置き上下動させる、チュアメニが負傷すればクロースを守備的MF化し、彼の守備力が足りないとなると横にバルベルデやモドリッチを並べて補強する、ビニシウスが欠場ならホセルをCFとしてロドリゴを彼の周りで動かしてゲームメイカー化するか、ロドリゴを偽CF化してブラヒムをゲームメイカー化してカバーする……。
今季はクルトワ、ミリトンが大ケガをしカマビンガとビニシウスも常時出場できていないが、それでもラリーガでは首位で、CLでは危なげなく決勝トーナメントに進んだ。DFの駒不足は明らかなのに、ラリーガではの71-72シーズン以来の失点の少なさ(18節で11失点)。年末の試合でアラバまで今季絶望の大ケガを負ったが補強をせず、どうやらチュアメニのCB化、という新たなパッチで乗り切るようだ。新スタジアム建設で補強費の無いクラブにとっては財布にも優しい。
要は、臨機応変に対応して結果を出す監督で、それは何より戦術の引き出しの多さのお陰なのだが、にもかかわらずアンチェロッティは“戦術家”とは呼ばれない。戦術家とは明確な理想のスタイル(フィロソフィー)を打ち出して、その周辺を具体的なアイディアで固めて実現させるタイプの監督、例えばグアルディオラとかクロップとかルイス・エンリケとかモウリーニョとかを指すからだ。