テレビや音楽のボリュームをつい上げがちな人は要注意!聴力と認知症との深い関係【老年医学専門医・山田悠史】
日々耳にする騒音が難聴につながる
実は、日々騒音を聞くことが、時間とともに私たちの聴力に影響を与えていきます。継続的に大きな音にさらされることは、最終的に難聴の程度に影響を及ぼす可能性が高いと考えられています。特に、高い音を聞き取ることが難しくなるタイプの難聴につながります。 アメリカでの2011年からのデータによれば、20歳から69歳のほぼ4人に1人に騒音による難聴の兆候が見られていました(参考文献2)。また、工事現場など、仕事上で大きな音にさらされていると報告した人々の中では、3人に1人が聴力の問題を持っていました。 大きな音は、仕事に限った話ではありません。実際のところ、日常生活で大きな音を耳にするのも珍しいことではありません。例えば、普段から通勤中などに大音量で音楽を聴いているという人も稀ではないかもしれません。普段は小さな音で聴いていても、電車内などではボリュームを上げているかもしれません。あるいは、野球やサッカーなど、スポーツのイベントでも、こうした大きな音にさらされることになります。
2時間の大音量ライブは実はアウト
一般的に難聴につながるレベルの騒音は、80デシベル前後またはそれ以上の音と考えられています。これは例えば、窓の開いた地下鉄の車内、居酒屋などでの人の大声、ピアノの音、カラオケ店内などが該当します。イヤホンやヘッドフォンでもこのボリュームは容易に超えることができます。あるいは、スポーツのイベントでは、平均81~96デシベル、最大105~124デシベルの音にさらされる可能性があります(参考文献3) 。また、ライブ音楽公演では、平均で112デシベル、最大で127デシベルの音が記録されています(参考文献4)。 このような大きな音に長時間さらされると、徐々に聴力が低下していきます。例えば、大声や芝刈り機、スポーツイベントのような90デシベルの音なら1日に約2時間まで、95デシベルなら約1時間まで、100デシベルなら15分までと、音量が大きくなるほど許容される時間が短くなります(参考文献5)。これは、2時間のライブに参加してしまえば、あっという間に許容範囲を超えるということを意味しています。ライブでなくても同様の音量をイヤホンから出していれば同じことです。 さらに、120~155デシベルを超えるような大音量では、ごく短時間でも重度から高度の難聴を引き起こす可能性があります。