なぜミズノは名門ラツィオとのパートナーシップを勝ち得たのか? 欧州で存在感を高める老舗スポーツブランドの価値とは
昨年比で「45パーセントもアップ」しているサッカー事業
「まずミズノとしての会社の方針があります。リージョンとカテゴリーという2つの切り口があるのですが、リージョン、つまり地域展開において、ミズノ全体で海外売上比率を増やしていこうというのが大枠の方向性なんです。現状(23年度)ミズノにおける売り上げの割合が日本国内が62パーセント、海外が38パーセント。この海外における売り上げをさらにアップさせよう、と。またカテゴリーという切り口では、サッカーはミズノの中で4番目に大きなカテゴリーになります。野球、ゴルフ、ランニング、その次がサッカーなのですが、その成長具合を見ると、サッカーがいまミズノの中ではとても伸びているんです。昨年で45パーセントもサッカー事業がアップしています。 つまり『海外というリージョン×フットボールというカテゴリー』。この掛け算がミズノとしての注力分野として今後の成長のエンジンというふうに考えています」 もちろん日本のスポーツメーカーとして日本市場にかける力を抑えるわけではない。日本での市場もこれまで以上に伸ばしていきたいという思いは非常に強い。 「その通りです。意味合いとしては、日本も伸ばすし、それ以上に海外も伸ばす、というところです。現実的な目線で考えますと、日本では今後人口ピラミッドが徐々に苦しくなってくるんです。人口が減るということは、シリアスにスポーツをする人口が減っていく。すでにサッカーチームや野球チームが単独だと成立せず、『隣のクラブ・少年団と合同でやってる』という時代になってきています。 ということは、いままでのミズノのビジネスのままだと苦しくなる危険性があるわけです。もちろんそうした時代の流れに対するアプローチもやっていますが、次のステップ、次の仕掛けとして、あらゆるリスク管理の観点から、海外比率を上げたほうがいいというのがビジネスの方向性ですね」
ラツィオはミズノのどこに魅力を感じたのか?
とはいえ、海外での比率を高めようと思っても、それがすぐ大型クラブとのパートナーシップにつながるわけではない。一度契約を勝ち取っても、毎年さまざまなクラブでサプライヤー契約終了のタイミングがくる。継続のための提示があってそのまま延長というパターンもあれば、一旦マーケットが開放されてオープンなコンペティションが行われるパターンもある。 欧州サッカー界におけるお金の動きは非常に大きい。欧州のみならず世界中をターゲットにしたビッグビジネスにつながるコンテンツなだけに、どのメーカーも最大限の力を注入して動いている。 そんななか、欧州サッカー界においてはまだまだ新参者のミズノが、欧州最高峰のUEFAチャンピオンズリーグへ進出をするほどの強豪クラブであるラツィオとのパートナーシップを勝ち取れたのは、日本人が思っている以上に大きなサプライズではないだろうか。ラツィオはミズノのどこに魅力を感じたのだろう? 「どこまできれいに表現できるかわからないんですけど……」と前置きしてから、中田は熱っぽく語り始めた。 「ミズノは創業118年の老舗です。加えてジャパンクオリティというブランド力もある。欧州において『日本ブランド×118年の歴史』という組み合わせには高い価値を感じていただけていると思っています。日本ブランドのクオリティへの信頼度は間違いなくあります。例えばアイテムの品質の高さ、そして安心できるお金のやり取りや納期通りに本当に納付してくれるのかとか。プラスやっぱりこれはお金がかなりかかることなので、条件面がうまくそのクラブとは合致したというところですね。本当にタイミングです。われわれとしてはあらゆるクラブに対してオープンだったところに、双方ウィンウィンの合意ができたからというところはあります」