なぜミズノは名門ラツィオとのパートナーシップを勝ち得たのか? 欧州で存在感を高める老舗スポーツブランドの価値とは
他競技の売り上げも目に見えて変わってきている理由
実際に欧州トップリーグのユニフォームにおけるミズノブランドロゴの露出による影響は計り知れないほどの波及効果があったという。2022年からラツィオとボーフム。23年からはアウグスブルク、ハンザロストクとのパートナーシップがスタートしたわけだが、その結果が数字としてどんどん出てきている。 「あえてキーワード的に表現すると、『イグニッションスイッチ(着火剤)』みたいな効果があるなというのがわかってきたんです。好循環を生むためのスターティングポイントになる可能性をすごく感じています。先ほど挙げましたリージョンとカテゴリーに好循環に波及していくわけです。ヨーロッパ×フットボールアパレルというのを先に攻めてスイッチを入れることができたら、他のリージョンのフットボール事業にポジティブな効果が出るということがすでに数字で見えてきています」 さらにラツィオとの取り組みが欧州内におけるフットボールビジネスでいい効果を生み出しただけではなく、遠く日本、あるいは韓国や東南アジアにおいても、数字で目に見えた効果が出てきているという。 「あとミズノってマルチカテゴリー、つまりいろんな種目でさまざまなアイテムを取り扱っているんです。アパレルだけじゃなくて、シューズも展開しているし、用具も扱っています。このマルチカテゴリー×マルチアイテムというバランスの取れたポートフォリオを持っているのが強みの一つではあるんですよ。それがあったからこそ、いろいろな時代がありましたけど、118年間事業を継続できているんです。 ミズノヨーロッパのリージョンでは、自分たちを「ジャパニーズ・マルチカテゴリー・パフォーマンスブランド」と定義してやっています。欧州においてフットボールで着火剤としてスイッチを押すことができ、そのほかの種目のチームアパレルビジネスにも効果が出てきています。バレーボール、ハンドボールの売り上げも目に見えて変わってきているんです」 中田の語った言葉の端々から、明確なビジョンで戦い続けるミズノがつかんだ確かな手応えを感じさせる。ミズノのブランドスローガンは「REACH BEYOND(リーチ・ビヨンド)」。日本語訳すると「その先へ手を伸ばそう」と訳せるだろうか。その深意は“いまを超える挑戦”だ。現状維持ではなく、現状を詳細に分析し、クリエイティブなアイデアをもって状況を打破し、将来へ向けて勇猛果敢にチャレンジし続ける。群雄割拠の欧州スポーツビジネスの中で、ミズノがどんな歩みを見せるのか。なんともワクワクする話ではないだろうか。 <了>
文=中野吉之伴