【特集】「心臓病の子どもを救いたい」小説『下町ロケット ガウディ計画』が現実に!モデルとなったメーカーと医師、異色の開発チームの挑戦 業界の“タブー”を破る発想の転換でたどり着いた、小児医療の新たな可能性
子ども用の医療機器開発に挑む町工場を描いた、池井戸潤氏の小説「下町ロケット ガウディ計画」。小説のモデルとなった中小企業と大阪の医師らがチームをつくり、その物語が現実になろうとしています。その背景にあるのは、子ども用医療機器の開発が遅れているという課題。異色の開発チームが示した小児医療の新たな可能性を取材しました。 【動画で見る】小説「下町ロケット ガウディ計画」が現実に モデルとなったメーカーと医師、異色の開発チームが示した小児医療の新たな可能性…心臓病の子どもを救う医療機器開発の裏側か
「先天性心疾患」の子どもの負担を減らすためにつくられた「シンフォリウム」
小児の心臓血管外科医・根本慎太郎さんが大切にしている言葉があります。 「実力の差は努力の差・実績の差は責任感の差」 「真剣だと知恵が出る・中途半端だと愚痴が出る」 「本気でするから大抵のことはできる・本気でするから何でも面白い・本気でしているから誰かが助けてくれる」 長年追い求めた悲願の医療機器の開発が大詰めを迎えたある日。苦労を共にした仲間を前に、根本医師はこう切り出しました。 (根本医師) 「夫婦が結婚して子どもほしいよね。で、妊娠しました。で、女房の腹がどんどんどんどん大きくなって、いよいよだ」 開発の成果を我が子に例えた根本医師、これからが正念場だと語ります。 (根本医師) 「今度はどうするかというと、親はその子どもがどういう風に育っていくか、どこまで育っていくのか、どういう風に育つかというのを今度は心配しないといけない」 過酷な手術を繰り返す子どもの負担を減らすために作られた新たな医療機器。その名も「シンフォリウム」。開発の裏側から見えた小児医療の新たな可能性とはー。
説明を受けるたびに息子は何度も涙を…成長に応じて何度も手術を必要とする「先天性心疾患」
この日、根本医師は子どもの心臓手術に臨みました。患者は、生まれつき心臓に異常がある「先天性心疾患」の1歳6か月の女の子です。心臓に見つかった穴を塞ぎ、狭くなっている肺動脈を切って広げます。「先天性心疾患」の赤ちゃんは「100人に1人いる」といわれています。心臓の穴を塞ぐため、一時的に心臓の動きを止めます。代わりに人工心肺が子どもの命をつなぎます。
穴を塞ぐため縫い付けるのは、フッ素樹脂でできている「パッチ」と呼ばれる“つぎ当て”です。この「パッチ」は伸びないため、子どもが成長して心臓が大きくなると交換しなければいけません。負担の大きい心臓手術を数年後には再び、受けなければならないのです。「『シンフォリウム』があれば、こんなことしなくていいのに」と根本医師は言います。そして、問題は他にも…。 (根本医師) 「(パッチは)異物なのね。異物に対して『これは自分の身体じゃないから攻めよう』というような、いわゆる免疫というか炎症というのが働く」 既存のパッチは2年も経てば素材が劣化し、カルシウムなどが付着して骨のように固くなり始めます。一方、開発中のパッチ・「シンフォリウム」は、ほとんど異常がみられず交換の回数を減らすことが期待されています。
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