ニュースタイルで完全復活! 巨人・菅野智之が明かす制球力の秘訣は「とにかく内野ノックをたくさん受けること」【前編】
■制球力を高めるには内野ノックを受けろ お股 今の時代、トレーニングやフォーム改造で球速を上げるのは比較的できると思いますが、制球力を高めるのはかなり難しいと思うんですよね。 菅野 絶対そうですね。 お股 菅野投手は制球力が非常に高いことで知られていますが、コントロールに関してはどのように考えていますか? 菅野 ウチの門脇(誠)のようなスローイングの上手い内野手は右足の使い方が上手なんですけど、そこにヒントが隠されていると思います。コントロールが良くない投手って、絶対に右足の使い方が悪いですから。 お股 具体的には、どういう使い方になっているんですか? 菅野 右足が潰れてしまうんです。藤浪(晋太郎)投手が典型ですが、右ひざが前に出ると、回転の軸も大きくなり、横にも縦にもぶれてしまう。右足を投球方向にしっかり踏み出せる投手は、絶対リリースが安定していて、コントロールがいいんですよ。 お股 なるほど。たしかに佐々木朗希投手(ロッテ)なども右足をしっかり使えていて、コントロールもいいですね。最近、野手投げのような投手が増えていますが、ある意味、自然な動きかもしれませんね。 菅野 昔に比べてマウンドも固くなってきていて、その分、床反力も受けやすくなっていますしね。大きな力を使うというよりも、コンパクトな野手のような投げ方だったり、ショートアームだったり、そういう投げ方がどんどん主流になってきていると思います。 お股 そのようなことを踏まえて、コントロールをよくするためにはどうしたらいいと思いますか? 菅野 よく後輩からも聞かれるんですけど、「とにかく内野ノックをたくさん受けな。サードでもショートでもいいから、内野ノックを受けてファーストに送る。10球でもいいからやってみて、そのイメージでブルペンに入りな」ってアドバイスを僕はしますね。 お股 なるほど、面白いですね。腕の手術などで本格的な投球ができない期間など、内野ノックをたくさん受けることで制球の感覚を高められるかもしれない、と僕も以前から仮説を立てていました。 菅野 それはめちゃくちゃ良いと思います。 お股 ちなみに、制球力の高い投手は子供のころからコントロールがいいイメージがあるんです。こうした投手たちは、団地の階段を一段ずつ狙って投げたり、ごみ箱の距離を徐々に遠くしながらボールを入れたりする練習をしていることが多いのですが、菅野投手はどんな練習をしていましたか? 菅野 家の近くの公園に石の柱があったんですけど、そこに狙って当てていました。大人ひとり分くらいの縦長の石の柱だったんですけど、その奥が森だったので、外すとボールを遠くまで取りに行かなくちゃいけなくて。 だから、必然的に力いっぱい投げるのではなく、「そこにぶつけるんだ!」という気持ちで慎重に投げていました。その結果、コントロールが良くなったのかもしれないです。コントロールって、本当に感性が大事だなと思いますね。 お股 面白いですね。「自然とそこにいく」という投球フォームを覚えるというのは大事だと思います。 菅野 ただ、ちゃんと理論付けて自分の投球を説明できないと、できなくなった時にどうしていいかわからなくなっちゃうんです。去年、実感しました。 怪我から復帰したら球速がめちゃくちゃ落ちてしまって、ブルペンで投げても140キロ出なかったんです。「これまでどうやってスピードを出していたっけ?」という状態だったので、イチからやり直しました。三塁から一塁へ投げるという練習もたくさんしましたね。 お股 では、感覚を思い出すというよりも、イチから理論立てて久保(康生)巡回投手コーチと一緒につくり上げていった感じなんですね。 菅野 そうですね。今はストレートの球速に関しても手ごたえはありますし、キャッチャーの大城に聞いても、「ストレートは今までで一番強いです」って言ってくれているので。スライダーの曲がりが戻ってくれば、また勝負できるかなと思っています。 ◆この続き後編は、明日3月30日(土)に配信します。 撮影/木部伸治