石破新首相に過度な期待は禁物【寄稿】
カン・チョルグ|培材大学日本学科教授
27日に行われた日本の自民党総裁選挙の過程で、候補者間の主要政策イシューは経済および政治環境、少子化など日本国内の問題がほとんどであり、候補者たちは韓日関係など対外問題については明確な立場を示さなかった。そのため、韓国のマスコミは石破茂新首相の過去の発言とキリスト教徒という情報だけで親韓派に分類しており、韓日関係の画期的改善に対する期待感が高まっている。 しかし、筆者は韓日関係の流れが大きな枠組みにおいては変わらないとみている。その理由は、石破首相が自民党内の無派閥であり、党内の支持基盤が弱く、解体された岸田派出身議員の支持のおかげで総裁選挙で勝利したと言われており、岸田文雄前首相の路線を越える歴史問題への謝罪や反省はなく、自民党の従来の政策方向と変わる可能性は高くないためだ。むしろ、いくつか懸念すべき点がある。 第一に、石破首相はこれまで自民党内の「安保政策通」と呼ばれ、日本の軍事力強化と安保体制の構築に大きな役割を果たしており、「自衛隊の軍隊化」と「集団的自衛権の行使」を主張してきた。防衛相時代からアジアの集団防衛体制、すなわちアジア地域で戦争を抑止するためにアジア版NATOの創設を急ぐべきだと主張してきた。しかし、東南アジア諸国や中国依存度の高い国々が、あえてアジア版NATOに加盟する理由はないとみられる。さらに、そのためには防衛力の整備や防衛費の増額も必要であるが、これは今後の日本政府の財政負担要因として日本経済の雷管となる恐れがあり、米国も反対していることから、実現の可能性は高くない。 第二に、石破首相は憲法改正に関して、戦力の保有を禁止した第9条2項を削除し、自衛隊を「国防軍」と規定すべきという立場だ。もちろん自衛隊の憲法明記は石破首相だけの公約ではないが、石破首相は自衛隊の役割を強化し、海外派兵と再武装など日本の安保強化および防衛力増大を積極的に主張してきた。さらに、米国との同盟は維持する一方、日本が独自の軍事力を備えなければならないとして、憲法改正に積極的な態度を示している。 しかし、これは石破首相の希望事項に過ぎず、実現の可能性は極めて低い。まず、憲法改正のためには、衆議院の3分の2以上が賛成した後、参議院の3分の2以上の賛成を得なければならず、その後の国民投票で有権者の過半数の賛成という厳しい手続きを踏まなければならない。そのうえ、近いうちに国会解散・総選挙を実施しなければならないが、日本国民の多くは憲法改正には否定的であるため、これを主張する自民党候補者に票を投じる可能性は低い。したがって、自民党が国会で3分の2以上の議席を確保できるかは不透明だ。 にもかかわらず、多くの韓国人たちは石破首相がキリスト教徒であるうえ、歴史について一部反省しており、靖国神社を参拝しないという理由だけで過度な好感を示している。ところが、石破首相の親韓的発言は、国会議員時代の発言に過ぎず、首相としての重みは違う。むろん、石破首相の歴史観が安倍晋三や菅義偉ら元首相たちよりは韓国に融和的なのは事実だが、独島問題については日本の領土だと主張しており、また、議院内閣制の日本で首相一人だけの力で大きな影響を及ぼすのは難しい。結局、日本の首相として日本を代弁するため、歴史問題において日本政府が一歩前進した動きを見せるのは難しいだろう。 したがって、石破氏が政権獲得後、韓国の望む水準まで前向きな姿勢を見せるという過度な期待は禁物だ。今後、韓日関係に及ぼす新首相の政治的メカニズムと政治性向を分析し、冷静に対処していく必要がある。 カン・チョルグ|培材大学日本学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )