アップル、中国でiPhone大幅値引き 背景に何が?
米アップルが中国最大級のネット通販セール「6.18セール」に合わせて、スマートフォン「iPhone」を大幅に値引きしている。同国での販売不振に加え、中国・華為技術(ファーウェイ)との競争激化が背景にあるようだ。 ■ iPhone、中国で20%引き アリババ集団の「天猫(Tmall)」や京東集団(JD.com)といった中国の主要ECマーケットプレイスのアップル公式サイトでは、一部のiPhoneモデルを最大20%引きで販売している。天猫と京東は、アップルの中国市場における主要な販売チャネルである。 米CNBCによると、256GBの「iPhone 15 Pro Max」の価格は、9999元(約21万6000円)から7949元(約17万1800円)引き下げられた。アップルは2024年2月にもセールを行ったが、値引き幅は今回のほうが大きい。 アリババによると、24年の6.18セールは、1回目の5月20日~28日に加え、2回目として5月31日~6月20日にも開催する。 ■ 中国で大幅値下げの背景 iPhoneの大幅値引きは、中国における販売低迷対策だと、シンガポールに本部を置く調査会社カナリスは指摘する。同社アナリストであるレウ・チウ氏は、「24年に入って2度目の値下げとなる今回、アップルは販売を促進するとともに、ファーウェイの復活に対抗する狙いがある。2月の値下げでは販売に勢いがついた」と述べ、今回の値下げも効果的な対策になるとの見方を示した。 米調査会社のIDCのデータによると、24年1~3月期の中国におけるiPhoneの出荷台数は、前年同期比6.6%減の1080万台だった。これに対しファーウェイは2.1倍の1170万台となり、同社は中国第2位のスマホメーカーへと復活した。
ファーウェイは米国の輸出規制下にありながら23年8月に、自社開発半導体を搭載した高機能スマホ「Mate 60 Pro」を発売し、米政府を驚かせた。 ファーウェイはかつて、スマホ出荷台数で世界1位に浮上していた。だが、19年に当時のトランプ米政権が同社を安全保障上の脅威とし禁輸措置を講じた。半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホ生産が減少した同社は、低価格スマホ事業HONOR(オナー)の売却を余儀なくされた。 ファーウェイの中国におけるスマホシェアは20年半ばに29%あったが、2年後にわずか7%に低下。そうした中でも同社は半導体などの部品の自社開発を進めた。23年8月には、5G(第5世代移動通信システム)への接続機能と、7ナノメートル(nm)技術で製造された半導体を採用したMate 60 Proを市場投入し、中国の消費者を引き付けた。 ファーウェイは24年4月、新製品「Pura 70」シリーズを市場投入したが、そのうちの「Pura 70 Ultra」も中国で評判が良い。アップルに対する競争圧力はますます高まっている。 ■ アップル、販売減速に歯止めか 一方で、アップルが24年2月に行った値下げ施策には効果があった。「アップルは中国市場での販売減速を乗り切ったようだ」と英ロイター通信は報じている。 中国工業情報省(工情省)傘下のシンクタンク、中国信息通信研究院(CAICT)のデータに基づくロイター通信の試算によると、iPhoneの24年3月の中国出荷台数は前年同月比12%増加した。24年1~2月に37%減少していたことを考えると、これは大きな改善である。 今回の値引き幅は2月の値引き幅よりも大きく、一層の効果が表れるのではないかとみられている。 アップルの24年1~3月期の売上高は前年同期比4%減の907億5300万ドル(約14兆2000億円)で、減収は過去6四半期で5度目だった。iPhoneの売上高が10%減少したほか、中国事業の売上高が8%減少した。ただ、ティム・クックCEO(最高経営責任者)は24年4~6月期の売上高について、1桁台前半のプラス成長になるとの見通しを示している。
小久保 重信