「何か行動を起こさなければ、雪がなくなる未来になってしまう」スポーツ界が使い捨てプラごみ削減に向けて立ち上がるワケ
27年末までにプラスチックごみ半減を目指す HEROsの新プロジェクト
⽇本財団(東京都港区、会⻑ 笹川陽平)は、アスリートたちと一体となって使い捨てプラスチックごみの削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE」を発表した。同プロジェクトは「2027年度末までに主要スポーツの興行における使い捨てプラごみの半減」を目標に掲げる。 プロジェクトパートナーとなったアスリートやスポーツ団体が自ら取り組んで発信していくことで、周囲のアスリートや団体、企業、ファンに働きかけていき、使い捨てプラスチックごみを減らしていく。プロジェクトの記者会見とトークセッションが3月28日、東京都内で行われた。 会見には、スキー・ノルディック複合で五輪3大会連続メダル獲得の渡部暁⽃さん(35歳)、サーフィンで東京五輪銅メダルの都筑有夢路さん(23歳)、競泳女子200メートル平泳ぎでバルセロナ五輪金メダルの岩崎恭子さん(45歳)、競泳でリオパラ五輪大会出場の一ノ瀬メイさん(27歳)、など、現役のアスリートや引退した選手など12人が出席し、それぞれスポーツ界からの視点で環境問題への危機感を表していた。
元オリンピアンが挑む環境問題
日本財団は2017年にアスリートと共に社会課題解決を目指す「HEROs~Sportsmanship for the future~」(HEROs)を立ち上げ、今までさまざまな活動をおこなっている。今回、HEROsのプロジェクトの1つとして、海洋汚染や異常気象など、地球規模で広がっている環境問題の要因のひとつとして挙げられている使い捨てプラスチックごみの削減に焦点を当てる。 プラスチックは簡単には自然分解されない。例えば、海中に漂うレジ袋をウミガメやアザラシなど海洋動物が口にしてしまい、体内にいつまでも残って、それが原因で死んでしまう。また近年、人間への影響を指摘されているのがマイクロプラスチックだ。極微のプラスチックの粒や破片を魚が口にして体内に溜まり、それを口にした人間の体内に微粒のプラスチックが蓄積され、健康被害が危惧される。プラスチックごみの問題は、長年言われ続けているが、なかなか解決に向かっていないのが現状だ。 加えて、プラスチックは、生成時、焼却時ともに、異常気象を引き起こす地球温暖化の原因となる CO2 を大量に排出している。リサイクル時にも約6 割は「サーマルリサイクル(焼却時の熱エネルギーを発電などに使う)」という形で実際に焼却処理をされており、焼却時に発生する CO2 が地球温暖化に拍車をかけるため、環境問題の解決に向けて、使い捨てプラスチックの利用そのものを減らしていくという、根本的な改革が必要だ。 そこで今回のプロジェクトを日本財団とともに中心となって立ち上げたのが井本直歩⼦さん(47歳)だ。アトランタ五輪の競泳の代表として出場し、4x200メートルのリレーで4位に入賞した経験を持つ。現役引退後、英マンチェスター大大学院の貧困・紛争・復興コース修了し、国際協力機構(JICA)、国連児童基金(ユニセフ) の一員として、アフリカなど発展途上国で教育支援、平和貢献に携わってきた。また、日本では一般社団法人SDGs in Sportsの代表をつとめる。 井本さんはアフリカを拠点に活動してきたことで、環境問題の深刻さをより考えさせられたという。 「海洋ゴミ問題、気候変動問題を非常に身近に感じてきた。途上国がそういった問題を押し付けられているような気分になった。多くが先進国から出るゴミで、エネルギーのために化石燃料を燃やしてきた。そのしわ寄せが発展途上国に被さっている状況を目の当たりにした」 そこで自らのバックグラウンドであるアスリート、スポーツを生かして問題に立ち向かえないかと考えた。 「海外ではアスリートの方々が、たくさん声を上げたり、活動をしている。日本でももっとこういった問題に、スポーツが力を発揮して、社会課題を解決していくようになるべきだと思っていた」