坂口健太郎「自分がWellbeingでいられるのは周りのおかげ」OCEANS AWARD受賞インタビュー
昨年に引き続き2回目の開催となったOCEANS Feel So Good AWARD。今年の「The BEST Wellbeings」の受賞者は6名。そして、セイコー プロスペックス特別賞を受賞したのは、俳優の坂口健太郎さんだ。 映画やドラマの中から受ける印象と、実際の印象がこれほど変わらない人というのも、なかなか珍しい。ひと言で言えば自然体。でもそれを実行するのは、年を重ねるほど難しくなってくる。 どうすれば坂口さんのように自然体で振る舞えるのか。そんなWellbeingな生き方のヒントを教えてほしいと思ったのだが、返ってきたのは意外な答えだった。
撮影現場の潤滑油を買って出る理由
「以前、懇意にしているスタイリストさんに『健太郎は、空気を読む人の空気を読んでいる』と指摘されたことがあったんです。ああ確かに、と思いました。撮影現場全体に気を配って、必要とあればその場の道化にもなれる。大事なタイミングも、絶対に見逃さないですし」。 空気を読むのは、どうやら俳優の仕事をしていくなかで培われたらしい。坂口さんは「近しい人の間で、諍いが起きている状態がいちばん苦手」だというのだ。 「自分に近しい人というのは、普通は家族です。ただ僕の場合、映画1本2カ月、ドラマ1本4カ月で撮るというときに、いちばん近くにいるのは俳優を含めたその作品のスタッフさんなんです。その空間で、何かしらの摩擦が起きるのがものすごくストレス。だから空気を読むこと、現場の潤滑油になることが得意になったんです」 そういった人ほど周囲に気を遣って、逆にストレスを溜め込んでしまうのが世の常。しかしながら坂口さんは、いわゆる“いい人”とは若干メンタリティが異なるようなのだ。
「そこまで自分を追い込まずにいられる理由は、自己肯定感の強さにあるんじゃないかと思っています。自分をちゃんと褒めることができて、自分をちゃんと叱ることができる。自分への愛が強いから、他人にも愛情を注げるんだと思います」。 撮影現場での潤滑油の話は、腑に落ちた。なぜならこのインタビューにおいても、坂口さんは抜群のコミュ力を発揮してくれたから。質問の意図を正確に把握して、わかりやすい言葉で答えを返してくれる。 「コミュニケーション上手というか……基本的におしゃべりなんですよ(笑)。人見知りもまったくしませんし。それに人間関係はもちろん、効率的に仕事を進めるための潤滑油でもありたいと思っています。 例えば、撮影では出番以外の進行を目にしておくことは、いろんな意味で効率化につながると思っています。カメラテストもスタッフさんではなく、本人が画面に入ったほうがイメージが湧くでしょう。そういう小さな効率化が、好きなんですよね。 撮影の段取りは、カメラマンも照明も把握しています。それを俳優が知って、マイナスなことは何ひとつないと思うんです」。 どこまでも自然体で他人を気遣うこと。それが坂口さんにとっての「空気読み」だ。その場の表層を取り繕う行為では、決してないのである。