「F-35迷子事件」は序の口!? 飛行機“暴走”の事件簿 人はどこまで「やらかしちゃった」のか
去年は無人F-35が行方不明に!?
1970(昭和45)年2月2日には、モンタナ州で空戦訓練中だったアメリカ空軍のコンベアF106A戦闘機が制御不能となりパイロットが脱出します。しかし脱出後、重量バランスが変化したのか偶然にも水平飛行に復帰。様子を監視していた僚機のパイロットが、脱出したパイロットへ「機体に戻った方がいいぞ」と無線でジョークを飛ばしたほどでした。 機体はゆっくりと高度を下げ、農場の雪原に滑るように不時着しました。本当にパイロットが「戻ったのか」と思うほどの安定ぶりだったとか。ただし燃料切れでエンジンが止まるまでの1時間45分、通報で駆け付けた保安官は近寄れませんでした。パイロットも無事でした。 不時着したのが雪原の農場だったため、機体の損傷は少なく修理され、任務に復帰したF106Aは「コーンフィールド・ボンバー」(トウモロコシ畑の爆撃機)と呼ばれるようになりました。1979(昭和54)年には事故当時のパイロットが再びこの機体に搭乗しています。退役後の1986(昭和61)年8月、アメリカ空軍国立博物館に寄贈され、現在も展示されています。 1989(平成元)年7月4日には、ポーランドを離陸したソ連空軍のMiG-23戦闘機が、パイロット脱出後も飛行を続けてしまい、西側との国境を越えて西ドイツ、さらにオランダ、ベルギーまで飛んでいきました。結果的に燃料切れで墜落し、地上で1名が亡くなっています。 2023年9月17日には、アメリカ海兵隊のステルス戦闘機F-35Bがパイロット脱出後11分21秒間、距離にして104km飛行し続け、1日以上行方不明になる珍事も起きています。 飛行機は非常に有益な乗りものですが、基本的に空飛ぶ危険物です。便利さリターンの最大化と、墜落リスクの最小化という努力によって飛行機は発展し、空は従来パイロットという特別の訓練を受けた専門職の占有域でした。しかし現代の技術は「パイロットなしでも飛べてしまう」機体を生み出しました。 ドローンは世界を変えつつあります。結局のところ自動車にせよ飛行機にせよ、技術的挑戦と実際の使用のあいだには、「不協和音」ともいうべき新たなリスク生まれます。
月刊PANZER編集部