「身近な口腔外科とは?」解説する公開講座も―口腔外科学会総会・学術大会、22日から横浜で
◇プログラムの見どころは
大会のプログラムについて、いくつかピックアップして詳細をお話します。 最初にご紹介したいのは満屋裕明・国立国際医療研究センター研究所長の特別講演「新興・再興感染症との戦いの過去・現在・未来と日本のサイエンス」です。満屋先生は米国立衛生研究所(NIH)傘下のがん研究所(NCI)に留学し、世界初のエイズ治療薬「AZT」を開発し、ノーベル賞の候補者として名前が挙がる高名な方です。新型コロナウイルス感染症がやや落ち着いた今、あらためて感染症について考える機会を持ちたいと、特別講演をお願いしました。ウイルス性疾患の治療薬開発の最前線で闘ってきた先生から、医療人、科学者としての貴重なお話が聞けると期待しています。 次にご紹介するのは、認定NPO法人ロシナンテス理事長、川原尚行さんの教育講演「究極の医療は戦争をしないこと、させないこと~スーダン内戦を経験して~」です。ロシナンテスは、アフリカに医療や水を届ける活動を続けている団体です。昨年、福岡歯科大学が独自に開いている学会で講演をお願いしたところ大変すばらしいお話だったため、もっと多くの方に聞いていただきたいと考え、口腔外科学会にもお呼びすることにしました。 特別報告として公立能登総合病院の長谷剛志・歯科口腔外科部長に「備えよ! 能登半島地震と病院歯科の役割 ~口腔被害の意外な理由とは~」と題してお話しいただきます。長谷先生は元日の能登半島地震発生後、口腔外科医として医療援助活動をされました。口腔外科医は、大きな災害発生時に歯や顎の骨が折れた人など負傷者を治療する立場にあります。いつ来るか分からない大災害への心構えをするためにも、まだ記憶も生々しい能登半島地震で実働した長谷先生に、当時の状況や活動などお聞きしたいと思います。 オランダ・ラドバウド大学のトマス・マール教授による「Advancing Oral and Maxillofacial Surgery through Artificial Intelligence(人工知能による口腔顎顔面外科の進歩)」と題した海外招聘講演は、オランダでデジタル技術を取り入れた口腔外科医療を早くから行っていたマール教授に、AIを応用したヨーロッパの口腔外科についてお話しいただきます。 最後に「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ=Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)」に関連する2つのプログラムを紹介します。1つはシンポジウム「MRONJポジションペーパー2023 before / after」です。MRONJは、骨粗鬆症の治療や予防に使う一部の薬の影響で顎の骨が壊死する病気です。原因となる薬を使った患者さん全てで起こることはないのですが、口腔外科にとっては非常に患者さんが多く、治療がしにくい病気です。当学会は診療に際しての指針となるよう2023年にMRONJの病態と管理に関するポジションペーパーを発表しました。発表後の治療動向や予後などその診療の実態について議論します。 また、MRONJは海外でも問題となっていることから国際シンポジウム「MRONJ~各国の現状と対策~」を企画しました。韓国、台湾、ドイツ、インドから専門の先生をお招きし各国の状況についてお話しいただきます。 MRONJのプログラムには毎年多くの会員が集まります。それだけ関心が高く、また治療に困っている病気といえます。