BYDシール 詳細データテスト 低速の快適性は要改善 高速域の長距離移動は快適 ハンドリング良好
キックダウン加速
20-40mph(32-64km/h):1.8秒 30-50(48-80):1.9秒 40-60(64-97):2.3秒 50-70(80-113):2.8秒 60-80(97-129):3.3秒 70-90(113-145):3.9秒 80-100(129-161):4.7秒 90-110(145-177):5.6秒
制動距離
テスト条件:湿潤・滑りやすい路面/気温3℃ 30-0マイル/時(48km/h):9.0m 50-0マイル/時(80km/h):25.2m 70-0マイル/時(113km/h):51.4m 60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.73秒 ■ライバルの制動距離 ヒョンデ・アイオニック6 RWDアルティメット(2023年) テスト条件:湿潤路面/気温12℃ 30-0マイル/時(48km/h):12.0m 50-0マイル/時(80km/h):31.2m 70-0マイル/時(113km/h):60.1m
結論 ★★★★★★★☆☆☆
セダンフォルムで後輪駆動ベースのBYDシールが、照準に入れているのは間違いなくテスラ・モデル3だ。この競争激しいクラスにあって、特別あげつらうポイントはほぼない。実際、シールはBYDにおける、ここまででもっともすばらしい努力の結晶だと言っていいい。 低速域での不快な乗り心地を除けば、乗り心地もハンドリングも調ったものに感じられる。ほかのBYDとは異なるカタチで、英国のストリートに合っているクルマだ。非常に快適なシートと実用的なインテリアの組み合わせは、長距離クルーズに向いた素養を感じさせる。航続距離も十分で、LFPバッテリーの技術的な魅力も兼ね備える。 それでも、運任せで計画性のないところが見えてしまうのも事実だ。ステアリングに常にある振動、ADASの貧相さ、そして最大の問題点が巨大なセンターディスプレイだ。走行中の使用において、ソフト面の出来が悪すぎる。エアコンだろうが運転支援機能だろうが、この画面から操作しようとすると、それすなわちプロブレム、となってしまうのだ。 全体的に、BYDシールは好ましいEVセダンで、不足は感じられない。しかし、ライバルの方が洗練度は高いという印象は拭えない。価格面でも、最安というわけではない。 ■担当テスターのアドバイス ◆イリヤ・バプラート クルマをオフにすると、メーターにメッセージが。「注意:このクルマには充電予約機能があります。マルチメディアを介して、充電時間を設定できます」。もっとわかりやすく書いてほしい。 ◆マット・ソーンダース BYDのサスペンションチューンと内装デザインには、アンチ・テスラ的な感じがある。それも、いい意味で。反対に、大型ディスプレイに依存したインターフェイスはじつにテスラ的だ。しかし、わかりにくいトリックはない。使いやすいセットアップだ。 ■オプション追加のアドバイス 安価な1モーター仕様で、魅力は享受できる。エクセレンス仕様でもさほど高くないが、標準車でも速さは十分以上。2モーターは1モーターより効率が落ち、航続距離は短くなるはず。価格は上がるし、後輪駆動ほどのファントゥドライブはないかも。 ■改善してほしいポイント ・ユーザーインターフェースは改良を。メニューはよりロジカルに、大きな画面の使い方はよりスマートに、ボタンはより有効な機能を割り当ててうまく使ってほしい。 ・運転支援機能は、欧州の道路へもっと上手くフィットさせてほしい。 ・急速充電の速度を改善し、事前コンディション調整セッティングを加えてほしい。
マット・ソーンダース(執筆) イリヤ・バプラート(執筆) ジャック・ハリソン(撮影) 関耕一郎(翻訳)