SNSに集う「サレ妻」たち、夫の不倫相手に慰謝料請求しても心の傷は癒やされず…「サレ損シタ得」が生み出す現代社会の病巣
●50代サレ妻の告白 夫の下着をDNA検査に「私ではない女の体液が」
家族や友人に打ち明けにくいこともあり、フィクションではないサレ妻は、ネットやSNSに救いを求める。 Xでは、「不倫をされた」という一点で、サレ妻たちが互いの傷に寄り添い、助け合う世界が形作られる。 弁護士ドットコムニュースがXのサレ妻たちに取材を求めたところ、複数の女性が応じてくれた。 その多くが配偶者の不倫を怪しんだり、確信を持った場合、ネットやSNSに情報を求め、DMなどで質問を受ければ親切に対応し、さらに感情を吐き出す場にしている。 50代サレ妻のAさんは数年前、「家庭一筋だった」はずの夫の財布から「ラブホテルのポイントカード」を見つけた。追及された夫はあっけなく不倫を認めたが、Aさんはアカウントを立ち上げ、"先輩サレ妻"たちの投稿を参考にしながら、裁判の可能性も見据えて、不貞行為の証拠を集め始めた。 男女トラブルに強いとされる弁護士や探偵を探すにも、コミュニティの情報を参考にしているという。 「Xを利用したのは情報収集と、サレさんたちと気持ちを共有したかったからです。最初はつらい気持ちを吐き出すだけでした。『内容証明』という言葉さえ知らなかった私でしたが、サレさんたちの発信は、証拠集めや法的手続きを取る上で参考になりました」(Aさん)
DNA鑑定に出した夫の下着から、Aさんとは違う女性の体液が検出された。パソコンから発掘した性的な行為に及ぶ写真を元に不倫相手の素性が判明。探偵を通じてビジネスホテルの「ダブルベッド」の部屋に入る2人の様子も押さえた。職場の外で女性を待ち構え、不倫を認めさせた。
●裁判で相手女性への慰謝料請求が認められても「プラス」にはならない可能性
相手女性に慰謝料を求める裁判中だ。始まってみれば、相手側証人になった夫にも裁判を起こせば良かったと痛感している。 日本の法律で、不貞行為(不倫)があった場合に損害賠償請求を認めることを直接に規定した条文はないが、民法では離婚裁判の原因として「配偶者に不貞な行為があったとき」が挙げられている(同法770条1項1号)。そして、判例は不貞行為(貞操義務違反)に及んだ不貞配偶者と不倫相手の共同不法行為と評価し、不貞慰謝料の成立を認めてきた。 裁判に至るまでに弁護士や探偵への支払いで100万円以上を費やしている。弁護士費用はごく一部しか相手方に請求できず、探偵費用は、損害として相手方に請求できるかどうかはケースバイケースであるため、裁判で請求が認められてもプラスにはならないかもしれない。 発覚から半年後の離婚成立、裁判で精神的に傷つき、鬱病になって入退院を繰り返した。事情を明かすと、大学生の子どもたちは寄り添ってくれたという。 相手女性の家族は何も知らない。不倫した側は変わらぬ日常を送っているのに、不倫された側の家族はボロボロだ。その非対称性に子どもたちも怒りを感じている。 相手女性を晒すことで複雑な思いを解消したいという。 Xの下書き投稿には、不倫相手の個人情報の記載とともに、パソコンから発掘した2人の性行為の動画を添付した投稿が「時限爆弾」のようにセットされていたという。 名誉毀損に問われるリスクがあり、弁護士に止められて、投稿することはおそらくないが「送信ボタンを押そうとして何度も止まった」。 動きそうになる親指を最後に踏みとどまらせたのは、子どもたちを「犯罪者の子ども」にさせられないからだという。