メルセデス・ベンツEQS 詳細データテスト 望外の操縦性 SUVよりMPV的 シートの操作に不満
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
EQS SUVに、B級道路でのエンターテインメントを期待するひとはいないだろう。実際、これほどのサイズのクルマなら、広い幹線道路以外は避けたくなるところだ。ところが、EQS SUVのハンドリングは予想に反してじつにみごとだ。 四輪操舵システムの存在には、すぐに気づくはずだ。前輪と逆位相に最大10度転舵する後輪は、巨大なSUVをタイトな駐車場でも楽に取り回せるものにしてくれるし、それより上の速度域ではアジリティを高める。メルセデスは後輪操舵をうまくチューニングしており、不自然に感じさせることは一切ない。 ハンドリングは、実際より500kgくらい軽いクルマに思える。エアサスペンションは、通常のセッティングではかなり大きなロールを生むが、スポーツモードではボディをしっかり抑えてくれる。高速道路へ乗る際にもスポーツモードにしたいくらい、ノーマルのままではソフトすぎると言ってもいい。 アクティブスタビライザーは備えていないので、物理法則に逆らうような挙動は見られない。常に多少のロールはあり、ただしそれはうまく抑えが効いている。275幅のグッドイヤー・イーグルF1が発揮する強力なグリップと、軽くて正確なステアリングは、確かな自信をもたらしてくれる。
快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆
超ソフトなサスペンションといえば、ふんわりした快適な乗り心地を期待するだろう。ある程度までなら、それは正解だ。波長の長い乗り味は、高速道路やA級道路で、いわゆる魔法のじゅうたん的なフィーリングをもたらしてくれる。 問題が起きるのは市街地で、サイドウォールの厚いタイヤを履いているにも関わらず、エアサスが粗い路面をいなしきれない場合だ。ドタバタして、不快な乗り心地となってしまう。 言い換えるなら、EQS SUVがお気に召すかどうかは、使い方に大きく依存するということになる。市街地での上質感や静粛性を多少ながら犠牲にしてでも、高速道路で驚くほど心地いいクルマに仕立てている印象なのだ。その要因となるのが、遮音とシートである。 80km/h巡航で60dBAという騒音値はじつにみごとなものだ。ロードノイズはほぼ完璧に遮断され、高速道路の速度域に入っても風切り音がわずかに増す程度。113km/hで65dBAというのもかなり静かではあるが、最近テストしたポルシェ・カイエンSと同程度で、新たな基準を打ち立てるほどではない。 シートはメルセデスらしく、硬めだがサポート性が高い。ビジネスクラス仕様では、ヘッドレストに過保護なくらい柔らかいピローが備わる。ちょっとばかり悩まされるのが、ランバーサポートとサイドサポートの調整だ。タッチ画面のメニューにあるスライダーが過敏で、うまくアジャストできないのである。