年金月20万円の75歳母、父を亡くし抜け殻に。死亡保険金3,000万円で「高級老人ホーム」に入居、笑顔を取り戻すも…“お金は問題ない”はずが、長女が退去を懇願のワケ【FPが解説】
母が選んだ有料老人ホームでの新しい暮らし
Aさんはまず、Bさんに有料老人ホームへの入居を相談しました。要支援1ではあるものの、特に介護が必要であるわけではないAさんの提案に、最初は驚いていましたが、最終的に賛成しました。なぜなら、具体的な入居先の候補がすでにあったからです。 実はAさんは、長年夫の闘病を支えてきたなかでどうしても自宅で夫を支えきれないときはお願いすることも考えよう、と思っており、評判のいい高齢者施設や住宅をあらかじめ調べていたのでした。ほかの2人の子どもからも賛同を得て、Bさんと一緒に3つの候補先施設に見学に行きました。 Aさんが特に気に入ったのは、郊外にある介護付有料老人ホームでした。その施設では、自立状態の方が多く、レクリエーション企画が定期的に多数ありました。散歩にも出歩きやすい立地で、毎日の食事を食堂のほか、ラウンジなど複数の場所でとることができましたし、2,600万円の入居一時金が必要になるものの、月額費用はお手ごろに思えたそうです。 また、介護が必要になったときも退去する必要がなく、入院が必要になったときも付き添いサービスが利用できる点がBさんにとっても安心だったそうです。施設に無事入居したAさんは、カラオケやボーリング、折り紙や菜園などさまざまなレクリエーションを楽しみ、充実した日々を送っていました。 しかし、Aさんは結局入居から1年で退去することになったのです。一体Aさんになにがおこったのでしょうか。
お金は問題なかったはずが…入居から1年で発覚した思わぬ事実
AさんとBさんは入居前、施設での利用料金の目安額をAさんの公的年金額を目安に20万円として考えていました。Aさんが入居した施設は以下のとおり、入居一時金を支払った上で、月額費用15万円をベースとした料金体系でしたので、十分足りるだろうと考えていたそうです。 ・月額費用:15万円(食費・管理費・光熱水費・特定施設入居者介護に対する自己負担額) ・家賃は入居一時金にて13年分の前払い/電気、通信費は別途個人契約により直接支払い ・別途介護保険サービスの自己負担額や個別的な選択によるサービス利用料、そのほかのサービス利用料が利用に応じて必要 しかし、Aさんの銀行口座の残高は入居後わずか1年で100万円減少することに。もともと施設入居時に一時金を支払ったあと、600万円しか残っていなかった残高は500万円を切ってしまいました。自宅は売りに出していましたが、なかなか買い手が見つかりません。 このままのペースではあと5年しかもたないなか、Bさんは危機感を抱いたそうです。もし今後、入院などをした場合には足りなくなるのではないか。まだまだ子どもの教育費もかかるなか、もしこちらの手出しが必要になれば厳しい。そこで、BさんはAさんの預金残高が1年間で残高が100万円も減少してしまった原因を突き止めようと、引き落とし内容を確認しました。施設入居後、Aさんの銀行口座から引き落としされていたお金は以下の3つでした。 ・施設からの引き落とし ・本人による引出 ・電気代/通信費の引き落とし