【心理カウンセラー・中元日芽香(元乃木坂46)】推し活とお金の関係を見直そう
中元日芽香さんは乃木坂46の元メンバーであり、現在は心理カウンセラー。この連載では、“推される側”を経験し、“推す側”のメンタルにも寄り添ってきた彼女ならではの視点で、推し活とメンタルヘルスの関係について語ります。今回のテーマは「推し活とお金」。なかなか切り離すことのできない、推し活と課金というシステム。ヘルシーにお金を使うって、どういうことなのか? 気になるテーマを深掘りしていきます! 中元日芽香さん(元乃木坂46)の写真をもっと見る
推し活とお金の関係について
皆さんは、自分のためにどんなお金の使い方をしていますか? 私は昔から「リラクゼーション」にはお金をかけるようにしていて、眠りが浅いなと思ったら信頼できるサロンに行って体をほぐします。アイドル時代はそうしてマッサージを受けることが、翌日以降のパフォーマンスに反映されましたし、美容的な視点でも有意義に感じられました。一人暮らしを始めたばかりの19歳にとっては、リッチなお金の使い方だったかもしれませんが、”課金”しただけの価値を私はそこに見出していました。 当時は、自分で自分のお財布を管理するのも初めて。みんなはどんなお金の使い方をしているのだろう? と観察するようになりました。お金があったらバッグやアクセサリーを買うという人、旅行やお芝居、映画を見に行くなど、経験や体験のためにお金を使う人、家の中を居心地よくするためにお金をかける人もいる……お金の使い方には、その人が大切にしたいものが表れるのだなあ、面白いなと実感しました。そうして私は、自分のためのお金の使い方を覚えていったように思います。 そして最近は、今後の長い人生を豊かにするために、お金とうまく付き合えるようになれたらいいよね、と考えるようになりました。今まできちんと学ぶ機会がなかったのですが、お金って、やっぱりよりよく生きることにつながっている。マネーリテラシーや、世の中の経済、投資について、自分ごととして勉強できたらと思っています。もちろん、推し活にも、メンタルヘルスにも、深く関わることだなと感じています。 ■推し活と課金は、切り離せないものになっているけれど… 私がアイドルをしていた10年前は、楽曲がサブスクで解禁される以前。ファンの方々の間では「CDをたくさん買うとすごい」という風潮があったように思います。「いっぱい課金した!」という発言はSNS上で大きな声として届いてくるし、「発売日にこんなに購入しました!」と、たくさん積み上げられたCDの写真には“絵ヂカラ”もありました。それらの人に比べて「自分は1枚しかCDが買えないから、推しに貢献できていないんじゃないか」と落ち込んでしまったり、うらやましいという気持ちが湧いたりする人もなかにはいらっしゃったのではないかなと思います。 昔も今も感じることですが、推し活とお金は切り離せないかもしれないけれど、お金を費やさないと推し活ができない、ということではありません。推し活にたくさんお金をかけられない人が、推しに貢献できていないかも、と自信を喪失しないでいられるといいな、と思います。 例えば私は、ブログにコメントがたくさん来ているのがうれしくて、アイドル活動をするうえでのモチベーションにもなっていました。生身の人が書くコメントって、あたたかさがちゃんと伝わってきます。CDや握手会のチケットの売り上げだけでなく、コメント数が増えていくことでも自分の存在が浸透していることを感じることができました。「推しを応援したい」という気持ちは、お金を介さなくても言葉や行動で表現したり、受け取ったりすることができると思うのです。 ■推しにお金を使うとき「目的」をきちんと見極めることが大切 一人一人、お金の事情は違って当たり前。学生か社会人か、家族と住んでいるかどうかなどで、推し活に使える金額には差が出てきます。ヘルシーな推し活を目指すなら、他人の「これだけ課金した」という情報を必要以上に取りに行く必要はないのではと思います。もし目に入ったとしても「人は人だよね」と冷静にジャッジして、自分なりの推し活を楽しむことが大切なのではないでしょうか。 逆に、推しへの課金の成果をSNSに投稿している人は、自分の推し活のメンタルについて振り返ることが必要かもしれません。SNSへの投稿が承認欲求を満たすためだけの行為であれば、この先も課金し続けないと心が満たされないことになります。エスカレートする課金を止められなくて、どこかで疲れてしまわないといいな、と少し心配になります。 10年前と比べて、特に今は推しへの課金の仕方も多様化しています。YouTubeでのスパチャなど、モノや形に残らない消費行動も当たり前になり、スマホひとつで24時間課金できます。「自分が何を目的に、推しに課金をしているか」をきちんと自覚しないと、自分にブレーキをかけられずに、実生活に支障をきたしてしまう危険もあるかもしれません。また、推しが卒業などでいなくなってしまったとき、虚しい気持ちになってしまう可能性もあります。 推し活には、お金かけた分、特別なコンテンツを味わえる幸せももちろん用意されています。ファンクラブ会員限定、メルマガ購読者限定などの情報を手に入れることで、また仕事を頑張ろう、という活力やエネルギーに変換されることもあるでしょう。「自分が幸せを感じられる」「特別な時間を過ごすことができる」などの目的のためにお金を使うことは、日々の癒しにもつながります。だからこそ、推しへの課金は自覚が大事。純粋な応援の気持ちで、自分の心を満たせるかどうか、そこにフォーカスすることで、推しへの消費行動はより豊かな体験に還元されるのではないかなと思います。 ■お金の使い方には、その人のメンタルや大切なものが表れるから お金の使い方には、そのときのメンタルが表れやすいもの。私にも体験があります。 気持ちが荒んでいて目についたものを衝動買い! でも「買おう!と思ったその瞬間が気持ちのピークで、商品が届いた時には魅力を感じなくなっている……そんな雑な無駄遣いをして、自己嫌悪を感じることがありました。 この商品にどんな価値があるか、手に入れてどんな生活を送りたいかを考えずに、目先の行動で欲求を満たそうとするだけの消費は、ストレスがたまっていることに対しての発散行為。あまりヘルシーなお金の使い方ではないなと感じます。 「このグッズがあると自分が元気になれそう」「頑張った自分へのご褒美にイベントに行って、モチベーションがアップする」。そんなふうに、お金で何かを手に入れたときの自分に「高まっている」実感がある人のお金の使い方は、見ていて気持ちがいいなあと思います。お金を使うことが気持ちいいのでなくて、お金を使って得られることが気持ちいい。推し活でも、“お金を使った先にあるもの”を見つめられたら、より素敵な、自分だけの体験になるのではないでしょうか。 心理カウンセラー&メンタルトレーナー 中元日芽香 1996年4月13日生まれ、広島県出身。2011年からアイドルグループ・乃木坂46のメンバーとして活動し、2017年に卒業。早稲田大学で認知行動療法やカウンセリング学などを学び、2018年にカウンセリングサロン「モニカと私」を開設。心理カウンセラーとして活動を始め、今に至る。著書に『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』(共に文藝春秋)。現在、ポッドキャストサイトPodcastQRにて、パーソナリティを務める『中元日芽香の「な」』を配信中 トップス¥51700/ミュラー オブ ヨシオクボ ビスチェ¥15400・パンツ¥23100・ブーツ¥31900/LIFE’s代官山店(TODAYFUL) ブレスレット¥52800/ズットホリック(バルブス) 撮影/森川英里 ヘア&メイク/上野祐実 スタイリスト/辻村真理 画像デザイン/齋藤春香 取材・文/久保田梓美 企画・構成/木村美紀(yoi)