馬術「井上喜久子」が63歳で3度目の五輪に出場できたワケ 吉永小百合らによる募金運動で集まったのは「驚きの金額」だった(小林信也)
吉永小百合らが募金
ソウル五輪に向け、友人たちが動き出した。馬術の仲間、オリンピックで知り合った仲間たちが「60歳を迎えてなおオリンピックを目指す井上さんの夢をかなえてあげたい」と、「1万円募金運動」を始めた。世界で上位を狙える馬の購入費、運搬費など必要経費は数千万円に上る。 体操銅メダリストで参院議員の小野清子、女優の吉永小百合らが声を上げ、後援会会員は1700人、募金は4000万円以上集まった。浄財で購入したオランダ産のテルドア号と、63歳の井上はソウル五輪に臨んだ。 結果は46位、決勝進出は果たせなかったが、応援した誰も成績など気にしなかった。馬を愛し、馬の気持ちに寄り添う井上の姿勢は、いまも後輩たちに受け継がれている。 小林信也(こばやしのぶや) スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。 「週刊新潮」2024年9月5日号 掲載
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