雰囲気が悪くなるデイサービス 悪気はないのだろうけど…スタッフも困る利用者の行動は
認知症介護指導者の上村尚之さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。 【関連】私は娘じゃないし!義父母の世話をなりゆきで引き受けた嫁 病院付き添いの時の心がけ4つ
Q.デイサービスに勤務していますが、リーダー的存在の女性利用者が「今日はレクリエーションはやめましょう」など、スタッフに口を出してくるほか、利用者にも「服装がだらしない」など注意します。雰囲気が悪くなり、困っています(30代・女性)
A.この利用者の方は、場を仕切ったり、利用者に注意したりすることで、自分の存在価値を確かめているのかもしれません。もしかしたら、これまでの人生においても、リーダー的な役割を担ってきたのではないでしょうか。ですから、私がスタッフであれば、この利用者のリーダー資質を大いに頼ります。味方にしてしまえば、デイサービスにとって大きな力になると思うのです。 ただし、ほかの利用者が嫌な思いをするのは避けなくてはならないので、その点ははっきり注意したほうがいいと思います。そのために必要なのが関係づくりです。 例えば私が勤務する施設で、すぐに席を立って、どこかに行ってしまう利用者の方がいました。私たち職員はずっとその場にいて見守れないこともあるので、周りを気にかけてくれるタイプの利用者の方に「もしどこかに行きそうになったら、話しかけて引き留めてもらえますか?」と頼んだことがありました。快く引き受けてくださり、あとで「助かりました」と御礼を伝えたところ、とても喜んでくださいました。こうして信頼関係ができていくと、何でも言いやすくなり、ほかの利用者に服装を注意する件も「直接本人に言わないでほしい」と伝えやすくなります。 また、「今日はレクリエーションはやめましょう」という言葉の裏には、実は明確な理由があるかもしれないので、そういったことも聞きやすくなると思います。理由がわかれば、スタッフがやろうとすることにただ口を出してくる人、という見方は変わってくると思います。 ほかの利用者の服装を注意することについても、実は正しい指摘をしているのかもしれません。例えば私が勤務する特養では、利用者の方を病院に連れて行くことがありますが、そのときに朝食のときの食べこぼしが服についていることがあります。そうした場合は確かに着替えたほうがいいですよね。 スタッフが、このリーダー的存在の利用者のことを“困った人”という目で見てしまうと、どうしても敬遠してしまい、関係性をつくりにくくなります。“頼れる人”という見方ができるようになるといいですね。 利用者のなかには、職員の助けになりたいと思ってくださる方は、たくさんいます。それぞれの適性を見極めて、利用者さん同士で見守り合い、支え合いができると雰囲気のいい理想的なデイサービスになるのではないでしょうか。
【まとめ】スタッフやほかの利用者に口を出すリーダー的存在の女性利用者。雰囲気が悪くなって困るときには?
・この利用者をさまざまな場面で頼って、リーダー的資質を生かしてもらう ・頼みごとを引き受けてくれたときには感謝を伝えて、関係性をつくっていく ・関係性をつくったうえで、ほかの利用者には直接注意をしないでほしい旨を伝える ≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫
上村尚之