国立印刷局「工芸官」の職人技……新紙幣に込められた150年受け継ぐ“超絶技巧”とは『every.16時特集』
20年ぶりに発行された新紙幣。この製作を担った国立印刷局所属の「工芸官」は、紙幣のデザインや彫刻など、専門的な技術をもった職人たちです。手作業にこだわる理由、そして次の世代に継承する取り組みとは…。今回、特別に取材を許されました。
■20年ぶり新紙幣発行「お札誕生祭」
東京工場会場内。10月、都内にある国立印刷局の工場で行われていたのは、「お札誕生祭」と名付けられたイベント。子どもたちは、新しい紙幣の仕組みに興味津々です。 少年 「これ、時計が何時か、一瞬見えるんだよ。10時10分」 また、お札の原料である「紙」を作る体験も。 子どもと参加した母親 「3Dホログラムとか、新しくなった技術を(子どもと)一緒に見たりしました」 子どもと参加した母親 「子どもに(紙幣を)よく知ってもらいたいなって」 20年ぶりの発行となった、新しい紙幣。
■紙幣の偽造防止のために…
この新紙幣、国立印刷局の「工芸官」と呼ばれる職人たちが、手作業でデザインや製作を行っています。一体どんな人たちなのか? 今回、私たちは特別に、工芸官への取材を許されました。しかし… 印刷局の職員 「顔と名前はNGでお願いします」 紙幣の偽造につながらないよう、身元が特定される取材はNG。工芸官は、紙幣以外にも、切手やパスポートなど、さまざまな製品を作っています。
■さまざまな技術を受け継ぐ工芸官
その中でも紙幣は、大本の設計図にあたる「原図」のデザイン。紙幣に描かれる肖像や建物などの「彫刻」。中心部などにある「すかし」の製作。そして紙幣全体に施された、細かい「幾何学模様」のデザイン。 それぞれを専門的な技術をもった工芸官たちが担当しています。 今回取材した工芸官は、肖像などの彫刻の部分の製作を担当しました。話を聞いたのは、16年目の男性工芸官。
■新紙幣担当「手彫り」を極める工芸官
工芸官 「我々は線でなく、点でこのように…」 記者 「点で描くんですか?」 工芸官 「点を打っていくことで、ものの形を表現していきます」 肖像の細かな「陰影」を正確に表現するために、「点」で描きます。複数枚の写真を参考に、その人物が一番活躍していた年齢をイメージして描くといいます。 次は、コンテ画の肖像を金属板に彫る作業。特注のルーペをのぞき込みながら、特殊な彫刻刀で慎重に線を彫っていきます。 カメラマン 「これ以上(カメラが)寄れないな…」 記者 「すごい細かい金属片が削られていっているのが確かにわかる」 1ミリの幅に10本以上引けるという、細い細い線。 紙幣の彫刻を担当 工芸官 「太い輪郭の線は、何十回も同じところに(彫刻刀を)通すことできれいに整えて」 繊細な作業のため、紙幣などの彫刻には、数か月単位の時間がかかるといいます。