木野花『ブギウギ』で家政婦「大野さん」を熱演中。美術教師になるも、ストレスと片頭痛で「命に係わる」と退職、役者の道へ
〈発売中の『婦人公論』4月号から記事を先出し!〉 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』では、スズ子を支える家政婦さん「大野晶子さん」を熱演、舞台や映画、ドラマで独特の存在感を見せる木野花さん。2023年には、演出家として読売演劇大賞・優秀演出家賞も受賞しました。自他ともに認める元気印の木野さんですが、体の痛みで動くこともままならなかった時期があったそうです。 (構成=村瀬素子 撮影=岸隆子) 【写真】笑顔でガッツポーズの大野さん * * * * * * * ◆痛み止めを飲み、足を引きずりながら ありがたいことですが、昨年後半からオファーをいただいたお仕事が立て込みまして、近年一番の忙しさでした。『ブギウギ』の収録で毎週大阪に通い、映画『熱のあとに』『じょっぱり―看護の人 花田ミキ』に出演。 役者業と並行し、演劇ワークショップで演出していた芝居の発表会もあってと、常に仕事が重なり、ほぼ休みなく働いて……。この状況を乗り切れるか、私! と半ば体力気力を試されてる気分で思わず気合が入り、気がついたら終わっていました。(笑) 撮影現場や芝居の稽古場に行くと、若い人によく言われるんです。「木野さん、なんでそんなに元気なんですか!」と。なんででしょうね。76歳になりましたが止まりませんね。うるさいくらい元気なようです。 今は健康な私ですが、60代の中頃は歩くのもつらい状況にありました。50代後半から脚の付け根が痛み始め、病院に行くと、変形性股関節症との診断。 この病気は、大腿骨と骨盤の間にある軟骨がすり減り、歩くたびに痛みが出てきて脚を動かしづらくなります。私は外股で歩くクセがあったので、年を重ねるうちに軟骨が激しくすり減ってしまったようです。
さまざまな治療法があるなかで、私は人工関節に置き換える手術を選択しました。ところが、医師に「もっと年をとってからのほうがいいでしょう」と言われたのです。人工関節は経年劣化していくため、下手に早く手術をすると、高齢になってから再度処置をすることになるとのこと。「限界まで我慢してください」と言われました。 そう言われても痛みはおさまりません。脚が痛いと、体と心までギュッと硬くなっていきます。それでも仕事は休まず、痛み止めを飲み、杖をついて、足を引きずりながら舞台に立っていました。7年前のある日、とうとう最後に残った軟骨がボロッととれた感覚があり、痛くて脚が動かせなくて、ようやく手術をする決断をしたのです。 手術後のリハビリは最低でも3ヵ月かかり、その間は歩けませんよ、と医師に告げられました。最初、硬くなった筋肉をほぐして伸ばすのですが、それが痛くてね。でも目標がありましたから、つらくはなかった。 3ヵ月後に稽古が始まる舞台にどうしても出演したかったんです。明治時代の物語で、和服を着て立ったり座ったりするシーンがあるので、股関節を動かせないと演じられません。なんとか治すしかない! 元来が凝り性で。理学療法士さんに言われたメニューよりさらにきつい訓練を課して追い込んでいたら、医師に「ちょっとやりすぎです。筋肉が炎症を起こしています」と注意されたほどでした。 おかげさまで、3ヵ月で完全に歩けるようになり、舞台に出演。「この年齢で、ここまで早く機能が回復した人は珍しい。アスリート並みです」と医師も驚いていましたね。 人工関節を入れて歩けるようになってからは、文字通り、体がフワーッと解放された感じでした。痛みがないってすばらしい。体だけでなく精神的にもどんどん明るくなって今に至っています。脚もすっかり回復して、痛みなくスタスタ歩けるようになりました。