反対意見への反応で即バレる…医師・和田秀樹「頭が悪い人の典型的な反応、知性と品格感じさせる人の物言い」
■物事を多面的に考えられる人は、賢くて優しい 一つの答えに固執することの危険性についてお話をしましたが、人や物事に、さまざまな要素や側面があるのだと理解することは、知性を高めるだけでなく、メンタルの面にも非常によい影響をもたらします。 私は精神科医として、長年「決めつけはうつ病のもと」と言っています。人は、「絶対にこうあるべきだ」という信念や思いが強すぎると、それが思い通りにならなかったときに、落ち込んだり、心が不安定になったりしやすいのです。 正しさで自分を縛るほどに、不機嫌さやストレスが生じ、生きづらくなっていきます。ですから、物事はなるべく多面的に考えるようにしたいものです。一つの答えで決着をつける必要などありません。自分の優位性にこだわる人ほど、この「うやむや」な状態を嫌うものです。けれど、「それもそうかもしれないね」「まあ、どっちでもいいよね」と柔軟にとらえ、時には受け流せるようなスタンスをとることは、結局のところ、自分が心地よく生きるための術(すべ)であり、賢い知恵なのです。 それは人間関係においても同じです。相手に対して思い込みや偏見を一方的に持つほどに、対人面におけるストレスは肥大化していきます。 どのような人にも、素敵な面とダメな面があります。両方を持っているのが人間で、どちらかだけの人はいません。ですから、相手の素晴らしい面だけを見て過剰に称賛するのも、反対に、ダメな面だけに焦点を当てて非難するのも、どちらも決して頭のよい行動とは言えないと思います。 たとえば芸能人の不倫が報道されると、みなこぞって袋叩きにするでしょう。でもそこで、あえて世間の風潮に逆行し、その人のよい面を見つけてみたりする。そういった寛容さを持つことも、頭のよさの一つだと思います。 認知心理学の世界に、「メタ認知」という言葉があります。これは、自分が認知していることを、俯瞰の視点から認知するということです。 つまり、自分が何らかの考えを抱いたときは、その内容を客観視しながら、他の考え方はないかな? とか、自分の思いこみに縛られていないかな? などというふうに、自問自答する習慣をつけることが大切なのだと思います。 一つの見方に固執せず、いくつかの見方ができる人、つまり「認知的複雑性」が高い人は、考え方の違う相手のことも理解し、総合的な判断をすることができます。 さまざまな角度から物事をとらえ、「あの人にもこういう、いいところがある」「もしかしたら、こういう事情があったのかもしれない」という寛容さを持てる人は、人としてとても成熟していて優しく、知的だと思いませんか? ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹