秋の鳥海山麓ミニハイキング。豊かな清流と森に包まれた高瀬峡の大滝へ
鳥海山南麓・長坂道の起点となる山の神付近は、鳥海火山溶岩流の末端部にあたり、複雑で繊細な地形一帯に湧水が見られます。湧水を巡りながら、鳥海山南麓最深部に位置する大滝をめざします。
湧水あふれる豊かな森
駐車スペースのある山の神からスタート。ここは長坂道を経て笙ヶ岳(しょうがだけ)に向かう登山口でもあります。歩き出してまもなく湧水があるので、湧水に触れて喉を潤していくのもいいでしょう。 登山道に戻り、分岐で長坂道を右に見て直進します。檜ノ沢(ひのそ)渓流の水音が聞こえる広葉樹の森を過ぎて、左手に屏風岩のある一つ目の吊橋・渡戸(わたど)橋を渡ります。杉林の道になると、やがて二ツ沢の水音が聞こえてきます。 植林された杉林の道に湧水が現われ、やわらかな水音を楽しみながら、コケに覆われた二ツ沢の湧水沿いに進んでいきます。蔭ノ滝(かげのたき)への分岐を過ぎ、気持ちのよい山道が続きます。
下り道になって、バンバ沢にかかる二つ目の吊橋・婆々沢(ばばさわ)橋を渡って登ると尾根分岐に出ます。ここを左手に進み、眺めのよい根堀(ねほり)峠でひと息入れます。 ここから下り道になり、カラ沢に出て、渓流沿いに進みます。サワグルミの巨木の脇を抜け、大滝の手前で沢を渡ります。板を渡してありますが、横に置いてあるときもあります。場合によっては石飛び、あるいは素足で、ほんの短い徒渉ですが慎重に渡ります。
やがて目の前に大滝が近づきます。ここで、しばし森の時間を楽しみましょう。 豊かな森の時間を堪能した後、往路を戻りますが、帰路に蔭ノ滝往復も入れてみることをおすすめします。滑らかな岩盤を縫うように流れる蔭ノ滝は、大滝とはまた違った趣きがあります。
森の彩り
今回紹介したコースでは、渓流沿いをゆっくりと歩くと、どこかでイワナの姿に出合えることもあるでしょう。紅葉・黄葉で色づいた葉や森を見つめると森の豊かさを感じられます。こういった静かな自然観察も秋の山歩きの楽しみです。また、春に見られる花とひょっこり出合えるのもうれしいことです。 自然探索にもってこいの道ですが、吊橋に渡されている板は、紅葉の時期が終わった後の11月上~中旬には外されてしまうので(天候により変動あり)、ご注意ください。
文・写真=斎藤政広