【更年期症状と間違えやすい病気に要注意! ①】更年期のホットフラッシュと間違えやすい「バセドウ病」。手の震えがあったら可能性大!
ホットフラッシュや汗が止まらない、倦怠感…これは更年期の典型的な症状。年齢も40代、50代だったりすると、更年期だからと思い込んで我慢してしまうことも。この時期の不調をなんでも更年期のせいにしがちだが、実はほかの病気が隠れていることもある。そんな病気について、女性医学の専門医である小川真里子さんに伺った。
HRTをやる気満々で来院した方が実はバセドウ病だった!
更年期になるとさまざまな不調が現れる。突然、カーッと顔や体が熱くなって、汗が噴き出して止まらない…これも更年期によくある症状のひとつ。 「更年期になってエストロゲンの分泌が低下すると、脳の視床下部が混乱して自律神経が乱れます。自律神経は呼吸、体温、血圧、心拍、消化、代謝、排泄など、私たちの生命を維持する働きをしているため、心身にさまざまな不調が現れます。これが更年期症状の原因のひとつです。 体温調整がうまくできなくて、突然大量の汗をかいたり、のぼせなどのホットフラッシュを起こすのもそのひとつです」(小川先生) こうした症状も更年期だと思い込み、しょうがないことと我慢している人もいるのではないだろうか? 「ところが、この更年期とよく似ている症状の病気があります。それが『甲状腺機能亢進症』で、そのひとつが『バセドウ病』です。 実際に私が婦人科で診た患者さんの例があります。 50代で発汗と月経不順、動悸がして疲れやすいという症状で、仕事にも支障が出始めたことで来院しました。ご本人としても、年齢的にも更年期だと思い込んで、HRT(ホルモン補充療法)などの治療をやる気でいらしたようです。 ところが、血液検査で甲状腺の異常が認められたので、内科の内分泌専門医を紹介したのですが、結果はバセドウ病でした。バセドウ病の治療をしたら、本人が更年期症状だと思っていたさまざまな症状が改善したといったケースは結構あります」
発汗に加えて手の震えがあったら要注意!
では甲状腺の病気、「バセドウ病」とはどんな病気なのだろうか? 「甲状腺は喉仏の下にある内分泌腺です。蝶々が羽を広げたような形をしていて、平均的な大きさは左右それぞれ縦4~5 ㎝、横1.5~2㎝、厚さ1~1.5㎝です。小さく感じるのですが、内分泌腺としては最大の臓器です。 この甲状腺では甲状腺ホルモンが分泌されます。甲状腺ホルモンは血液の流れに乗って心臓、肝臓、腎臓、脳などの臓器、全身の細胞に運ばれ、体の新陳代謝を活発にする働きをしています。子どもの発育をはじめ、人間に欠かせないホルモンです」 【甲状腺ホルモンの働き】 ●体温の調整 ●脳の活性化 ●新陳代謝の促進(脂質代謝や糖代謝を促進、骨の強化など) ●心臓や胃腸の活性化 「バセドウ病は免疫系が過剰に反応して、甲状腺が刺激されることで甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまう、自己免疫疾患のひとつです。甲状腺ホルモンは新陳代謝を調整しているので、これが多くなると、暑がりになり、汗をかきやすくなるなどの症状が現れます。 罹患の男女比は男性1:女性3~5で女性が男性の約4倍。男女ともに30代~40代に多く発現します。発症の原因は遺伝や外傷、ストレスなどといわれることもありますが、実際のところははっきりわかっていません。生活習慣に気をつけていても、発症するときはする…といった病気です」