「ビビる、ビビらないよりチャンスのにおいを感じて」日本サッカーの将来を担う16歳を育てる、廣山望が語るポケットの攻略と「チャンスのにおい」とは
|ポケット周辺の守備は数をこなすしかない
―守備側から考えると、ポケットをとられない守り方が必要です。 廣山 ゴールを守る際は、優先順位を踏まえた上で、ポジションをとったり、予測したりすることが、大切になります。それと、ポケットに向かって走ってくる相手に対するボールの角度も、重要なポイントです。 ゴールから遠い方向に走る相手に対して、うしろから、慌ててファウルを犯す必要はありません。でも、ゴールに向かってくるポケットランの相手に対しては、誰かが必ず出ていかなければいけないですし、誰かが出たら、ほかの選手が、その場所を埋めなければいけません。選手が、形ではなく、原則に従って判断しなければいけないわけです。 ポケットに対する守備は、練習の賜物です。ポケット周辺の守備については、数をこなすしかありませんし、数をこなせば、頭と体が連動して、冷静にプレーできます。 板倉滉選手(ボルシアMG=ドイツ)や冨安健洋選手(アーセナル=イングランド)は、最後にゴール前で対応する際に、決して慌てません。ただし、スピードを上げる際はギアをキュッと入れて、出るべきところに出ていきます。相手の状況を見た上で、出るべきときは出なければいけないですし、逆に、出ずにスペースを守らなければいけないケースもあります。 そこで慌てると、後手を踏んでしまいます。何が起きそうなのかを予測することが大事。シュートを打たれるにしても、枠に飛ばせないような場所にポジションをとらなければいけません。慌てて出ていって、コースを空けてしまうのは良くないです。最悪なのは、相手が外向きのタイミングで、慌てて出ていった結果、空いた場所を使われることです。ポケットを使われないような状況判断を繰り返し下していけば、大丈夫なポイントが見えてくるはずです(図5)。
―経験が、大事になります。 廣山 ですから、16歳の時期にすべてを理解させるのは難しいです。27歳とか28歳になれば、わかってくるものですが、U-17年代からやると、センスがある子は、かなりうまくなります。 先ほど話したU-17ワールドカップに出場した選手の中では、小杉啓太(ユールゴーデンIF=スウェーデン)が、最後にめちゃくちゃ上手になりました。数的不利な状況であっても、1人で2人分のスペースを消しましたし、最後はボールに出ていきました。難しい状況でも、相手の可能性を狭める守備(図6)ができるようになったんです。経験値が関係してくる部分ですが、自分が得意とする守り方の形に持っていけるようになると良いですね。 PROFILE 廣山望(ひろやま・のぞみ) 1977年5月6日生まれ、千葉県出身。本田裕一郎監督(当時)の指導を受けた習志野高校において、福田健二(名古屋グランパスなどでプレー)らとともに、全国高校総体優勝を経験し、卒業後、ジェフユナイテッド市原(当時)に加入した。2001年に海外に渡り、セロ・ポルテーニョ(パラグアイ)やブラガ(ポルトガル)などでプレー。セロ・ポルテーニョ時代に日本代表に選出され、2試合に出場した。04年に、モンペリエ(フランス)から東京ヴェルディに移籍。セレッソ大阪やザスパ草津(当時)などにも所属し、12年に引退した。スペイン・バルセロナでの指導者海外研修を経て、14年から、JFAアカデミー福島U-15の監督やU-17日本代表のコーチなどを歴任。現在は、25年のU-17ワールドカップを目指すU-16日本代表の監督を務める
サッカークリニック編集部