舞台『焼肉ドラゴン』2025年10月に四度目の上演決定、金時生役の公募オーディションも開催
2025年に日韓国交正常化60周年を迎えることを記念し、同年10月に新国立劇場にて、日韓合同公演『焼肉ドラゴン』の上演が決定。また、今回の上演に伴い、焼肉屋を営む金家の一人息子「金時生」役の公募オーディションの実施が発表された。 【写真】『焼肉ドラゴン』作・演出の鄭義信 『焼肉ドラゴン』は、2008年に芸術の殿堂(ソウル・アート・センター)とのコラボレーション企画として、鄭義信が新国立劇場に書き下ろし、制作された作品。万博に沸く1970年前後の関西の地方都市に暮らす在日コリアン一家と、彼らが営む焼肉屋に集う人々を生き生きと描いた本作は、初日が開けるとあっという間に評判が口コミで広がり、東京・ソウル公演では、毎回スタンディング・オベーションとなる熱狂的な支持を受け、この年の演劇賞を多数受賞。 また2018年には鄭義信が自らメガホンをとり映画化。日韓の過去、現在、未来を、 音楽入り芝居でおかしく、そして哀しく切なく描いたこの物語が、2008年、2011年、2016年に続き、2025年四度目の上演を果たす。 今回の上演にあたり、焼肉屋を営む金家の一人息子「金時生」役の公募オーディションの実施が決定。「金時生」は、在日コリアン二世の15歳。異母姉二人と異父姉一人がいる四人姉弟の末っ子であり、金家の長男として可愛がられている。いい教育を受けさせたいという父親の方針で私立の中学校に通っているが、いじめにあい、失語症となり、学校もさぼりがちな状態であるという役どころだ。 応募期間は、2024年9月2日(月)12:00~9月11日(水)23:59まで(オンライン受付のみ)となっている。 【作・演出:鄭義信コメント】 『焼肉ドラゴン』時生オーディションを受けようと思っている君へ 僕は正直言えば、オーディションが嫌いだ。君も、たった数分の面接や、短い台詞の読み合わせで、「おれのなにがわかるんだよぉ!」と、憤懣の声をあげたくなるだろう。たしかに、慌ただしい遭遇では、君の得意とすることはなんなのか、君の美点はどこにあるのか、わかるはずもない。 今回のオーディションも、君の要望に応えられるものでないだろう。でも、僕が求めているのは、輝くような才能でもなく、飛びぬけた演技力でもない。『焼肉ドラゴン』という物語の中、家族の浮沈みを静かに見守る、時生という魂がほしいのだ。上手い、下手ではない、この在日コリアンの家族と寄りそい、ともに笑い、ともに涙する魂がほしいのだ。 僕がオーディションが嫌いな最大の理由は、たった一人を選ぶために、君たちの大勢をふるい落とさなければならないことだ。残酷で、とてもつらい作業である。けれど、君かもしれない、他の誰かかもしれない時生と出会うために、僕は今回、真摯に立ちあおうと思っている。 まだ見ぬ時生君、僕に会いに来てください。僕に君の思いを伝えに来てください。 ≪プロフィール≫ 鄭義信(ちょん・うぃしん) 1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。その一方、映画に進出して、同年『月はどっちに出ている』の脚本で、毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。さらに平成13年度芸術祭賞大賞受賞を受賞した『僕はあした十八になる』(01/NHK)などテレビ・ラジオのシナリオでも活躍する一方、エッセイ集『アンドレアスの帽子』なども出版。2018年には自ら初監督を担い、『焼肉ドラゴン』を映画化した。 現在も、文学座、こんにゃく座ほかに戯曲を提供する傍ら、21年に浅草九劇をホームグラウンドとした新劇団ヒトハダを旗揚げ。近年では23年に、ポン・ジュノ監督の世界的ヒット映画『パラサイト 半地下の家族』を舞台化。24年は『欲望という名の電車』(演出)、『男たちの挽歌』(脚本・演出)がある。新国立劇場では、『たとえば野に咲く花のように』『アジア温泉』の作、『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』『赤道の下のマクベス』の作、演出を務め、初演の『焼肉ドラゴン』で、第16回読売演劇大賞優秀演出家賞、第12回鶴屋南北戯曲賞、第43回紀伊國屋演劇賞、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。 また、日本から韓国への招聘公演だけでなく、10年『赤道の下のマクベス』、14年『歌うシャイロック』(『ベニスの商人』を音楽劇に翻案)、15年『コーカサスの白墨の輪』(唱劇形式に翻案)など、韓国芸術団体への書下ろしも多数ある。 【公演概要】 『焼肉ドラゴン』 ■公演日程:2025年10月~12月 東京公演、最大12月28日までの全国公演の可能性あり ■稽古日程:2025年8月下旬稽古開始予定(新国立劇場内リハーサル室にて) ■公演会場:新国立劇場 小劇場 ほか ■作・演出:鄭 義信 ■芸術監督:小川絵梨子 ■主催:新国立劇場 ≪ものがたり≫ 万国博覧会が催された1970(昭和45)年、関西地方都市。高度経済成長に浮かれる時代の片隅で、焼肉屋「焼肉ドラゴン」の赤提灯が今夜も灯る。 店主・金龍吉は、太平洋戦争で左腕を失ったが、それを苦にするふうでもなく淡々と生きている。 家族は、先妻との間にもうけた二人の娘、静花と梨花、後妻・英順とその連れ子・美花、そして、英順との間に授かった一人息子の時生…ちょっとちぐはぐな家族と、滑稽な客たちで、今夜も「焼肉ドラゴン」は賑々しい。ささいなことで泣いたり、いがみあったり、笑いあったり…。 そんな中、「焼肉ドラゴン」にも、しだいに時代の波が押し寄せてくる。
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