「部下が怖いんです…」部下に辞められた上司の闇 「離職の連鎖」起きる前に離職の心理を理解する
今、多くの企業が人手不足に悩み、離職を防ぐことは喫緊の課題となっています。 そんな中、部下の離職を複数回経験した人は部下の指導が疎かになり、それがさらなる離職者を生む負の連鎖が生じ、深刻な事態に陥っている会社もあります。 その負の連鎖とはどういったことなのか、そしてそれを防ぐためにはどうすればよいのか。経営心理士として1200件超の経営改善を行い、経営心理士講座を主宰する、一般社団法人日本経営心理士協会代表理事の藤田耕司氏の著書『離職防止の教科書――いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』から一部を抜粋・再編集してお伝えします。 【書籍】「離職の理由と対策が体系化されている」「事例が豊富で明日から使える」と話題の『離職防止の教科書』
■今、最も多い相談は「離職を防ぎたい」 私は経営心理士、公認会計士として心理と数字の両面から企業の経営改善をしています。 その中で今、いちばん多い相談が人手不足に関するものです。 募集をかけても人が採れないので、社員に辞められたら辞めた穴を埋められない。それで現場が回らなくなる。まずは離職を防ぎたい。そういったご相談が多いのです。 そして、相談者の方からは次のような戸惑いの声があがっています。 「若い人はストレスに弱いというから仕事の負担を軽くしたら、『この会社はぬるい』と言って若手が辞めました。私はどうすればよかったんですか」
「仕事がよくできるから部下を昇進させたんです。そしたら辞めたいと言ってきたので、慌てて理由を聞いたら、『昇進したくなかったです』と言われ、そのまま辞めていきました。せっかく給料も上がったのに、わけがわかりません」 部下の離職を複数回経験した人は、ある一定の態度をとるようになります。その態度が離職率をさらに高め、深刻な事態に陥っていくケースが今、増えています。 その態度の1つが、「部下の指導を放棄する」というものです。
自分が指導した部下が辞め、育成にかけた時間が無駄になることを繰り返し経験すると、次に新人が入った際に「どうせあなたもすぐ辞めるんでしょ」と思うようになり、半ば指導を放棄するような状況になっていきます。 それによって新人は十分な指導が受けられず、仕事についていけなくなって離職する。そして上司は「ほらまたすぐ辞める。最近の新人は本当にどうしようもないな……」と、より一層指導に消極的になる。 そんな負の連鎖に陥ると会社の離職率がさらに高くなり、深刻な事態に陥っていきます。