“元暴走族リーダー”牧師が若者の更生を支援 裏切り、暴言「やけどじゃ済まない」のになぜ続けるのか
仕事先を紹介するも裏切られ…
現在に至るまでの24年間、約150人の若者に衣食住を提供し、相談などを含めると300人以上の支援を行ってきた。就職や進学などで自立していった若者たちとは今でも連絡を取り合っているが、支援がうまくいかなかったケースも無数にある。 「6年ほど前でしょうか。紹介した仕事先で空き巣を働いた子がいました。親から虐待を受けていて、児童自立支援施設にも入っていた難しい子です。少年院から出てきたところを引き受けたんですが、僕のことを“第2のおやじ”みたいに慕ってくれていました。彼を信頼して僕の後輩の会社を紹介したものの、クビになってしまって。逆恨みするかのように、仲間と一緒に工具や機械100万円分と車2台を会社から盗み、その車で人を跳ねたんです」 恩をあだで返す行為に、野田さんは深い落胆を覚えた。「『世話になっている人やその関係先では迷惑をかけるな』という暗黙のルールがあるはずだと思っていました」と、当時の気持ちを振り返る。 「仕事の紹介先は、僕たち支援者にとってすごく貴重。仕事が決まれば人生も安定するし、その子がうまくいったら次の子も紹介できる。だから就職先というものに対して、僕は並々ならぬ気持ちがあるんです。まして、紹介先は大切な後輩の会社です。後輩に対する損害に心が折れて、彼の少年審判に呼ばれたとき、正直『もう行かんとこう』と思いました。でも僕が行かずに放っておいたら、自暴自棄になるのではないか。結局審判に行って、『ちゃんとしろ』と厳しくしかりました。2回目の少年院送致だったので、彼は長期という処分(処遇)になりました」 少年の退所から今年で3年。彼はまだ1度も再犯せずに過ごしている。退所後1度だけ、野田さんに会いに来たそうだ。 「10万円を持ってきて、『これ、会社の社長に渡しといていただけませんか』と。ここまで困ったケースは初めてでしたが、非行少年に仕事を紹介するというのは、やけどじゃ済まないこともあると感じた失敗でした」