「鬼」や「地獄」に頼らずとも、子どもに言うことをきいてもらうには? 専門家に聞く“効果的な声かけ”とは
子どものしつけに苦労しない親はいません。何度言ってもいうことを聞かない、親の言葉は聞き流す……そんなとき、「鬼に叱ってほしい!」と思うこともあります。「地獄の絵本」や「鬼からの電話」などに頼らずとも、子どもに言う事をきいてもらうにはどうしたらいいのでしょう? 発達心理学者で東京家政大学こども支援学部教授の岩立京子さんに聞きました。 【マンガで読む】「極度の運動オンチ」だと思っていたらDCDと診断された。体験記はこちら(全16枚) ■「鬼の電話」は、即効性があっても効果は限定的 “鬼の電話”を初めて聞いたときには、びっくりしました。「親の言うことをきかない子はどこだ~」「早く寝ないと食っちまうぞ!」とかなり怖い声で脅してきます。これは確かに怖いぞ、と感じました。 子どもはもっと怖いでしょう。怖いから言うことを聞きます。けれど、その効果はあくまでも限定的だと私は思います。 その理由の1つは、子どもの精神面の発達です。 4~5歳ごろになると「どうせ鬼なんていないよ」と気づくようになります。「でも、もしかしたらいるかも……」と不安な気持ちは残るかもしれませんが、脅しの効果は発達とともに小さくなってくるものです。 2つめの理由は、恐怖や脅しによるしつけは、あまり効果的ではないからです。 人は相手に恐怖を感じると、言われたことに嫌でも従います。でもそれは単に怖いからであって、なぜそれをしなくてはいけないか、という根本的な理解には結びつきません。 それに、人は恐怖や痛みには慣れやすいのです。たたくしつけと同じで、最初は1発たたけば言うことを聞いても、次はもっと強くたたかないと言うことをきかなくなります。これはあきらかに、身体的虐待です。 しつけとは本来、社会のルールやマナー、人への思いやりなどを子どもの中に育てるためにするものです。最初は親がいちいち指示していても、少しずつ「こうすると人に喜んでもらえる」「こうするとみんな気持ちよく過ごせる」と子ども自身が気づいて自分から動けるようになる、それが目的です。 そのためには、子ども自身がしつけの意味を理解しなくてはいけません。親は「黙って言うことを聞きなさい」ではなく、その意味を丁寧に説明し、何度も繰り返し伝え続ける必要があるのです。