170年以上の歴史を持つ「バリー」 変革の出発点は「自分たちを恥じないこと」とCEO
WWD:日本市場でのビジネスは伸びている?
ジロットCEO:昨年から比較して伸長しているものの、ここからさらに規模を拡大できるポテンシャルがある。ラグジュアリー業界の中でも日本はカギとなるマーケットだ。さらに伸ばしていくためには、ブランドの認知以上に消費者が実際購買する時の検討対象となる「考慮集合」に含まれる必要がある。現職に就任以降、数年かけて特にデジタル分野に注力し、中国大手EC「Tモール(天猫国際、T MALL)」や「JDドットコム(JD.COM)」にも出店してきたが、現在は広げたネットワークの質を上げていくフェーズに入った。今年は各都市でブランドのストーリーをより強く発信できる実店舗にプライオリティーを置き、出店を加速させていく計画だ。ブランドのストーリーを発信する重要な拠点である銀座店に投資していくことが、日本市場全体、もしくはアジア圏全体でのプレゼンスの底上げにつながると考える。
WWD:ストーリーを伝えるための具体的な工夫は?
ジロット:スイスのアイデンティティーを表現するために、内装はミニマルでありながら温かい雰囲気にこだわった。来店客には居心地のよいホームのように感じてほしい。什器の多くはスイスのビンテージ品だ。スイスのカルチャーを感じてもらうきっかけにもなるし、サステナビリティの観点からもすでにあるものを再利用することが望ましい。棚に飾った多くの書籍からは、世界の文化芸術や建築、クラフツマンシップに敬意を払う当社の姿勢を感じてもらえると思う。
WWD:一連の改革を通してすでに新たなイメージが確立し始めたと感じるビジネス上の変化はある?
ジロットCEO:まだ始まったばかりだ。人生は直線ではなく紆余曲折あって当然だ。肝心なことは、ブランドのデザイラビリティを上げるという向かうべき方向性を見失わないこと。この2年でブランドの存在感は増している手応えがあるし、プレスやバイヤーからはこれまでになかった反応をもらえている。正直ここまでのビジネス状況は、ローラーコースターのようだった(笑)。だからこそ、長期的な視点を忘れないように心がけている。現状に満足しているかと聞かれたら、答えはノーだ。まだ始まったばかりだし、やるべきことはたくさんある。