170年以上の歴史を持つ「バリー」 変革の出発点は「自分たちを恥じないこと」とCEO
ニコラ・ジロット=バリーCEO(以下、ジロットCEO):就任直後に行った市場調査では、消費者の間で「バリー」の認知度は比較的高く、品質や卓越したクラフトマンシップなどポジティブな印象を持たれている一方で、実際に購入したいと思うデザイラビリティ(=望ましさ)に欠けていることが分かった。原因の1つは、ブランドのポジションが不明確なことだった。つまり、「バリー」とはどんなブランドなのかを伝えきれていなかった。ブランドのDNAを土台としながらそのポテンシャルを最大化するには、これまでの製品中心の考え方ではなく、「バリー」にしかないクリエイティビティーをしっかり届けることが重要だ。まさにここがシモーネに期待したい部分でもある。
「変革には時間がかかるし、忍耐力も必要だ」
WWD:あらためて「バリー」のブランドポジションを定義すると?
ジロット:ある顧客は「バリー」のことを「スイスのシックなユーティリティーブランド」と表現した。私たちがオフィシャルに使用している表現ではないが、核心を突いていると思う。エレガントでシックなデザインやインドアでもアウトドアでも通用する機能性、日常的に手に取れる価格帯のリアルなワードローブであることは私たちが大事にしている要素だ。特に品質、素材、価格のベストなバランスは常に意識している。ラグジュアリー産業の競合他社と比較すると、高品質な製品をフェアな価格帯で提供していることが強みだ。
WWD:22年には4年ぶりにクリエイティブ・ディレクターを立てルイージ・ビラセノールを任命したが、わずか1年で退任となった。その影響をどう見る?
ジロットCEO:彼のおかげで20年ぶりにファッション・ウイークに戻ってくることができたことは大きい。ブランドのクリエイティビティーやメッセージを強く発信する機会になったはずで、彼にはとても感謝している。2度のコレクションでは、彼のエネルギーやブランドに対する情熱を強く感じたものの、彼は自身のブランドに専念したいと考えていた。変革期である私たちも歩みを止めるわけにはいかないので、すでにチームの一員として携わってくれていたシモーネを次に任命したわけだ。どんなコラボレーションも人生同様にうまくいくときもあれば、いかない時もある。変革には時間がかかるし、忍耐力も必要だ。長期的なゴールに辿りつく過程では、いっときの痛みも伴う。もちろん、シモーネとは長いスパンで共にストーリーを描いていきたいと願っている。