節税効果で注目の「マイクロ法人」だが…得するつもりが損してた!とならないために知っておくべき「2つのデメリット」【新進気鋭の税理士が解説】
マイクロ法人の注意点
マイクロ法人のデメリットについては、ご理解いただけたでしょうか。ここからは、年間の維持費や手間を考えてもマイクロ法人を作るメリットが上回る、という方のために、気をつける点を述べていきます。 注意点(1) 個人と法人は別の事業にする必要がある 注意点の一つ目として、個人と法人は別の事業にする必要があります。つまり、個人事業主として行っている事業とは、別のビジネスをマイクロ法人でやっていく、ということです。 これは、まったく同じ事業内容の売上を都合よく個人と法人に分けて計上することはNGで、税務署から法人の実態を疑われてしまうからです。 たとえば、 ・個人事業…コンサル ・法人……不動産管理 など、明確に分けることが必要です。 その際、メインで稼ぐ事業は個人事業で行うようにするのが、このスキームのポイントです。 注意点(2) マイクロ法人の規模を大きくしない 2つ目の注意点は、マイクロ法人の規模を大きくしないということです。マイクロ法人は売上を伸ばす目的ではなく、あくまで社会保険料や税金の負担を減らす目的で活用すべきです。 というのも、マイクロ法人で必要以上に売上を増やすと、その分だけ社会保険料・税金の支払いが増えてしまいます。ですので、マイクロ法人で法人税を抑えるためには、なるべく、かかる経費以上の売上をあげないことが重要になります。 役員報酬を年54万円に設定すると、社会保険料が最低額になり、なおかつ、給料所得控除(55万円)もフルで受けられます。それに社会保険料や税理士費用などマイクロ法人の維持費を合わせると、年間経費は80~90万円くらいになると思われます。 利益が残らないように、マイクロ法人の売上もそれと同じくらいにしておくのがいいということです。 注意点(3) 社会保険料削減メリットがなくなるリスク 最後に、今後の制度改正次第では「社会保険料削減」という最大のメリットがなくなってしまうリスクもあります。 2024年から社会保険料の適用範囲がパートにまで拡大するなど、改正によって社会保険料を広範囲から徴収する流れになってきています。 今後の動き次第ですが、個人事業主にまで社会保険の適用範囲が広がったり、社会保険料の算定方法が変わったりする可能性もあり得ます。社会保険料目当てでマイクロ法人の設立を考えている人は、動向を注視する必要があるでしょう。 辻 哲弥 税理士法人グランサーズ
辻 哲弥