【ラグビー】キーワードは「ツーメン・タックル」と「フィニッシュ・オン・トップ」。リーグ出身のキッドウェルコーチ、日本代表の防御を語る。
『超速ラグビー』を構成する要素はアタックだけではない。ディフェンスでも相手より先に仕掛け、早く動き続けて優位な状況を作り出していく。 そんな防御法をチームに落とし込んでいるのが、ディフェンス面を担当するデイビッド・キッドウェル アシスタントコーチだ。 6月29日の19時に秩父宮ラグビー場でキックオフされるJAPAN XV対マオリ・オールブラックス戦に向け、前日会見に臨んだ同氏。エディー・ジャパンが導入する新しいディフェンスシステムについて、ポイントをこう説明する。 「我々のディフェンスのアイデンティティは、相手の攻撃をスローダウンさせ、自分たちが早くディフェンスラインをセットすること。そのために、『ツーメン・タックル』と『フィニッシュ・オン・トップ』という2つのキーワードを掲げて取り組んできました」 ツーメン・タックルとは一人目が下へチョップタックルに入り、二人目がボールをターゲットに入るいわゆるダブルタックルだ。ここで重要になるのはヒットの位置。ハイタックルでカードをもらわぬよう、しっかりと一人目が下に入り、二人目もヘッドコンタクトが起こらないようタックルするスキルが求められる。 フィニッシュ・オン・トップとは、タックルで倒した時に自分たちが相手の上になる状態を指す。当然ながら上に乗れば下の相手より先に起き上がれるし、展開をスローダウンさせることもできる。ノットロールアウェイを取られることなくスローダウンさせるためには、「バランスが大事」とキッドウェルコーチは語る。 13人制のラグビーリーグ出身。選手として14年プレーし、ニュージーランド代表にも選ばれた。引退後はコーチに転じ、12年間リーグでキャリアを重ねてきた。 その後、「(15人制の)ラグビーユニオンで自分のコーチングを試したかった」とアルゼンチン代表のコーチに就任し、昨秋のW杯にも帯同した。大会後はオーストラリアのリーグのクラブからの打診もあったというが、ユニオンでの指導を続けたかったこと、また「世界的な指導者であるエディー・ジョーンズHCの元で学びたかった」という理由から、日本代表のアシスタントコーチのオファーに応え来日した。 就任に際しジョーンズHCからいわれたのは、「日本の選手はアタックが大好きだが、ディフェンスは好きではない選手が多い」ということだった。そのため「私の最初の仕事は、選手たちをアタックもディフェンスも好きにさせることだった」と振り返る。 実際に指導して感じたのは、日本代表の選手たちのポテンシャルの高さだ。 「日本の選手は足腰が強い。その脚の力を生かすために、しっかりと脚を踏み込んで肩をぶつけることに取り組んでいます」 海外の強豪国に比べれば体格は劣るものの、フィジカルにプレーできる選手がそろっており、十分なテクニックもある。そのテクニックを、疲労が蓄積する中で繰り返し遂行することにフォーカスしているという。 さらにこう付け加えた。 「日本の選手には、『自分たちはできる』と信じてほしい。その信念を持って、どんどん前へ進んでいけることを見せたい」 新生エディー・ジャパンの初陣となった6月22日のイングランド戦は、序盤の10分を支配したもののチャンスを仕留めきれず、そこから相手側へ傾いた流れを立て直せなかった。その反省を踏まえ、マオリ・オールブラックス戦に向けこう意気込みを語る。 「イングランド戦の序盤はアタック、ディフェンスともいい形を作れていたが、遂行力に一貫性がなく敗れてしまった。明日の試合では、その部分をしっかり発揮してほしい」 早朝6時からのトレーニングにもひたむきに取り組む選手たちの姿勢を、「向上心が高く、すばらしいエナジーがある」と評する。厳しい鍛錬の成果を、29日のマオリ・オールブラックス戦で示したい。