築69年「大阪でいちばん異形のビル」がついに解体へ…ビルも“住民”もエキセントリックな「味園ビル」が濃厚すぎた
40年以上続く「スナックまち子」のママは...
「だから、と思いますよ。いつなくなるかわからんはかなさがあるから、みんな来るんであって。だって(東京・新宿の)ゴールデン街も、いつなくなるかわからないやないですか。いままでにもなくなる話、いっぱいあったじゃないですか。なんとなく続いてるけど」 たしかに、19年前の開店時から期限つきだとわかっていたからこそ、冷静でいられるのかもしれない。 「多少はね、麻痺はしてましたよ。でも、ショックはそんな。お疲れさん、みたいな。ついに学祭終わるなあ、みたいな(笑)。いまはもう、昭和レトロから平成レトロいう時代でっせ(笑)。もはや。昭和レトロはもう滅びゆくもんですわ(笑)」 各テナントが、終わりを意識しながら共存している。間もなく終わろうとしている味園ビルの2階はそんな状況だ。当然、これからどうするかについての考え方もそれぞれ異なる。移転を考えている人もいれば、1年くらい休もうと考えている人もいる。いずれにしても、「深夜喫茶銭ゲバ」は予想外に長く続いたということのようだ。 「長いほうですね。2階の店は一番長くて20年かなあ。『スナックまち子』は、もう40年以上やってますけど」 やはり、「まち子」のママにもお話を伺いたかった。
味園ビルの2階は街の商店街のようだった
「あそこ、閉まるの早いんですよ。5時半ぐらいに開いて、もう10時半ぐらいには閉まりますよ。『バスで来とるから、早よ帰らんと』みたいな。まち子さんは、もう引退するっていうてましたね。『80まではやるで』いうてたら、ほんまに80までやりはったからね」 話を伺っていたら、味園の2階がどこかの街の商店街のように思えてきた。限られた空間のなかで肩を寄せつつ、でも密接すぎるわけでもなく、適度な距離感を保っている。だから、居心地のよさが生まれたのかもしれない。 「あと、ここってハシゴしやすいから、それもよかったんですよね。(お目当ての店が)閉まってたら、『ほな、ほかの店行こか』みたいな。まだ開けてないときに『何時に開きます?』みたいな電話がかかってきて、『もうちょいしたら開くから、どっかほかのところで時間潰しといて』とか、そういう使い方もできるから。初めて来た人とか、片っ端から回るみたいな。じゃあ、後で戻ってくるから荷物置いといていいですか、みたいな」 なお、「深夜喫茶銭ゲバ」はすでに移転先が見つかっているらしい。年が明けたら、味園ビルから徒歩2分の場所での営業になるようだ。とはいえ、次の場所が見つからない店もまだまだ多い。