【イベントレポート】「関心領域」は目で見るのではなく“耳で聴く映画”、監督らがティーチインに参加
映画「関心領域」の特別上映会が本日5月15日に東京・ユーロライブで開催。上映後のティーチインに監督のジョナサン・グレイザー、音楽を手がけたミカ・レヴィ、プロデューサーのジェームズ・ウィルソンがオンラインで参加した。 【動画】「関心領域」予告編はこちら 本作では、アウシュヴィッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む所長ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスとその家族の暮らしが描かれる。ヘスを「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のクリスティアン・フリーデル、ヘスの妻ヘートヴィヒを「落下の解剖学」のザンドラ・ヒュラーが演じた。 第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞した本作。グレイザーは「人間はなぜ同じ過ちを繰り返すのか。本来は対峙するべき事象を、人間は安全・安心な領域で過ごしていたいから黙認する。この作品ではその極端な例、黙認することがどこへ行き着くのかを示した。ホロコーストは歴史の一片ではあるが、現代にも訴えかけるような何かをこの作品を通して届けたかった」と述べる。 本作を観終わったばかりの来場者は「登場人物の表情が見えにくかったが、どういった意図があるのでしょうか」と質問。グレイザーは「意図的にそういう演出をした。観客を映画的な心理で物語に引き込みたくはなかったんだ。壁に張り付いているハエのように、登場人物たちを観察する感覚で物事を捉えてほしかった」と回答する。 また「日中の明るい場面でも悲鳴が聞こえてきた」「真っ暗闇での音が印象的でした」との感想があると、レヴィは「物語へいざなうような音楽ではなく、ロジックがあるようでない今作特有の音が多分にある。これは目で見るのではなく、耳で聴く映画。収容所で起きている“見えない暴力”を耳で感じ取ってほしかった」と述懐した。 ウィルソンは「グレイザーのビジョンをいかに具現化していくかが私のミッション。普通ではない撮影手法だった。午前中をリハーサルに使い、綿密に組み立てたうえで10台のカメラを同時進行で回して本番に臨んだ」と振り返り、「この映画では、今この家族はここで生きているんだという感覚を皆さんに味わってほしい」とメッセージを送った。 「関心領域」は5月24日に東京・新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。 (c)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.