幸四郎と松也のダブルキャストで、劇団☆新感線の伝説の舞台が歌舞伎として蘇る
「永遠の演劇少年」いのうえさんと、新感線の面々から学んだこと
──幸四郎さんは市川染五郎時代に、『阿修羅城の瞳』(00年、03年)、『アテルイ』(02年)、『髑髏城の七人~アオドクロ』(04年)、『朧の森に棲む鬼』(07年)で新感線に主演され、松也さんは『メタルマクベス』disc2(18年)の主演で初めて新感線を経験されました。いのうえさんの演出にはどんな刺激がありますか。 幸四郎 いのうえさんは具体的に動きを演出してくださるんですけど、「確かにこれカッコいいよね」とか、「ここでキマると気持ちいいよね」とか、すぐに納得させられるというか、乗せられてしまうんです(笑)。 松也 新感線の皆さんと一緒にお芝居を作って感じたのは、一見バカみたいなことを(笑)、全員が全力で楽しんでいるということでした。そういう大人たちを見ているだけで僕は楽しかったですし、その一番手にいるのがいのうえさんで永遠の演劇少年みたいな。その情熱や魂が基盤となって作品が作られていくのを目の当たりにしていると、自分もこうありたいと思えて。これから演劇に携わり、もの作りをしていくうえでの勇気をいただけた感覚があります。 幸四郎 それこそ、5秒使うだけの小道具も、時間をかけて素晴らしいものを作るんですよね。殺陣にしても、当たり前のことではありますが、全員に意味のある手をつけていく。お芝居も、アドリブを入れる隙がないくらい作り上げられていますし。そこまで徹底しているからあれだけ面白いんだと気づかされるんです。 ──第二弾では、第一弾以上に歌舞伎の要素を盛り込みたいといのうえさんがおっしゃっていましたが、歌舞伎俳優として提案してみたいことはありますか。 幸四郎 いのうえさんの作品は、音楽にインパクトのあるものが多いんですけど、その意味では、歌舞伎はまさに音楽的なお芝居で、長唄や義太夫などいろいろな音楽がありますので。それと新感線の音の組み合わせで歌舞伎NEXTの音楽というジャンルができたら面白いなと考えたりはしています。 松也 僕はまだ具体的な案はないのですが、せっかく歌舞伎の要素を取り入れるのであれば、何をすれば作品にとって効果的なのかをしっかり見極めていきたいと思っています。見得をすればいいというものでもありませんし、何が必要かを考えながら、歌舞伎が持っている力を出したいです。 幸四郎 稽古では自分自身のことで手一杯になってしまうと思いますが、でも、出演者がそれぞれ自分を最大限活かせるような稽古を積み重ねていけるといいですよね。 松也 たぶん逆に、歌舞伎俳優としての引き出し以外のものも求められると思うんです。僕も『メタルマクベス』のときに、吹っ切ってやらなきゃいけないこと、越えなければいけない壁みたいなことがありましたから。そこでそれぞれのいいものが出てくるだろうなとも思うので、今回出演する歌舞伎俳優たちにぜひ期待していただきたいです。