菅田将暉 × 黒沢清 映画「Cloud クラウド」が描く「普通の人がギリギリに追い込まれる現代社会」
リアリティーのある演技を追求
――映画は予想外の展開をしますね。最初はサスペンスフルに進みながらも、途中から物語の雰囲気がガラリと変わって激しいアクションが繰り広げられていきます。
黒沢:今回の映画の出発点は、現代の日本社会に生きる普通の人々が、最終的に殺す、殺されるというすさまじい関係になっていく物語を作りたい、ということでした。普通の人ってどういう人?と言われると難しいのですが、基本的には反応が曖昧な人というか。そこではっきりと決断していれば人生が変わったかもしれないのに、心の中で葛藤があってすぐに決断ができない。というのが、普通の人にありがちなことじゃないかと思います。この映画の登場人物は、ギリギリになるまではっきりしないまま生きてきた人たち。そういう人たちが曖昧なままでは済まされない状態に立たされるんです。
――最後にはとんでもない状況になります。日本の映画の多くは、銃が出てきた途端に嘘っぽく見えますが、本作ではアメリカ映画のように自然に銃が映像に溶け込んでいました。
黒沢:そういう作品になるために頑張りました。日本では銃を日常生活の中で見ることはありません。銃を初めて見た人、握った人、撃った人はどんな感じになるのか。そういうことを想像しつつ、アメリカの映画とかドキュメンタリーを観直して、日本でも起こりうることとして描こうと思いました。銃を抜いたりすると、日本の映画では銃にカメラのフォーカスを当てるんですよ。でも、アメリカでは役者の顔を映す。銃を撃つからといって銃をことさら意識しない。日常の中に銃があるから、銃を抜くのは当然の成り行きとして撮影しているんです。そこがすごいと思って、今回の撮影でもその辺りは気をつけていました。銃撃戦にリアリティーを出すために、照明、小道具、音響、みんな一丸となって頑張ったし、俳優さんにも銃を撃った時の反動とか、芝居も工夫してもらいました。
菅田:この映画の銃撃シーンは、「撃つぞ!」と叫んで銃を撃って相手が倒れる、という段取りではないんです。何かをしている時に撃たれたりするし、撃たれてうめいている人の横を移動したりする。だから、目の前で起こっていることや銃撃音にちゃんとリアクションするようにしていました。